リバウンド防ぎたい! 減量後の体重キープ期間が大切
カロリー、ウェブで計算
「痩せたままでいるにはどうしたらいいのか。その研究は今までほとんどされて来なかった」。そう語るのは『最後のダイエット』などの著書がある予防医学者の石川善樹氏だ。石川氏は減量に成功するにはダイエット期間を「体重を減らす減量期間」と「落とした体重をキープする維持期間」に分けることが大切だと説く。先の見えない減量を続けるとモチベーションの維持も困難になる。適度に減量と維持を繰り返すことで適正な体重に近づけるという考え方だ。
リバウンドを防ぐカギを握るのが維持期間だ。ダイエットで抑えるべきカロリーは年齢や性別、現状と目標とする体重、期間によって変わってくる。実は医学・生理学の分野でも痩せるために必要とされる正しいカロリー計算の仕方が分かったのは2011年のことだった。米国立衛生研究所のケビン・ホール博士らが解明し、学会で話題を呼んだ。
しかしホール博士たちの計算方法は「維持期のカロリー計算の仕方がやや粗かった」と石川氏は指摘する。そこを精緻化して開発したのが「減量シミュレーター」だ。
スマートフォン(スマホ)やパソコンから誰でも無料で利用できる仕組みにした。減量シミュレーターではまず、年齢や性別、体重、職場での仕事の仕方や休日の過ごし方、目標とする体重や減量期間などを入力する。そうすると1日の基礎代謝と平均摂取カロリー、減量期と維持期の体重変化のグラフが示される。これがダイエットプランだ。一人ひとりのダイエットプランに合わせて、減量期と維持期に抑えるべきカロリーが示される。
「子どもを産んでから体重が増えたままなんです」。こう悩みを打ち明けるのは川崎市に住む加藤幸子さん(40、仮名)だ。妊娠前は50キロ強だった体重が出産後に60キロまで増加。ぽっこり出てしまった下腹が悩みの種だ。
加藤さんは夫のすすめで減量シミュレーターを使うことにした。目標体重は57キロ、目標日数は60日に設定した。シミュレーションの結果、減量期の60日間に減らすべきカロリーは1日当たり348キロカロリー、その後の維持期では128キロカロリーであることが分かった。
シミュレーション結果が示されるウェブサイトには「プリン=101キロカロリー」「ウオーキング(30分)=108キロカロリー」など、参考となるカロリーがずらりと表示されている。加藤さんは「消費すべきカロリーが明確に表示されると減量にも取り組みやすい」と話す。
もう一つ、注目を集める減量方法が緩やかな糖質制限を指す「ロカボ」だ。ロカボとはローカーボハイドレートの略で、低いを意味するローと、炭水化物を意味するカーボハイドレートを合わせた造語。ローカーボとも呼ばれる。
ロカボの提唱者である北里研究所病院・糖尿病センター長の山田悟氏は「ロカボ食はおいしいことが大前提。そうでないと継続ができない」と話す。最近はファミレスやコンビニでも低糖質のメニューが増えてきているという。
ロカボと一般的な糖質制限の違いは、その緩やかさにある。例えばご飯は半分、おかずからは芋類を抜く。その代わりに血糖値を上げないたんぱく質や油は満足するまで食べる。そうして1食あたりの糖質量を20~40グラム、1日当たりの合計を130グラム以下に抑えれば血糖値の増加が抑えられ、ダイエットにも役に立つという。
厳しすぎる糖質制限は結局リバウンドを招くということも、緩やかな糖質制限としてのロカボが注目される背景の一つとして考えられそうだ。
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「ロカボマーク」普及めざす 食の業界、低糖質を明示
一般的な認知度がまだ高いとは言えない「ロカボ」だが、普及を目指す動きも活発になってきた。キリンや江崎グリコなどが加盟する「食・楽・健康協会」は「ロカボマーク」=写真=を作成。低糖質の食品に表示したり、イベントで使用したりすることで、知名度の向上を図っている。
マークは商標権も取得している。新たにマークを表示した商品を発売するためには、ロカボの条件を満たすほか、食・楽・健康協会への加盟が必要となる。
外食産業などでもロカボ対応が進んできている。すかいらーくが6月から、同社のファミリーレストラン「ガスト」で低糖質の麺類とスイーツのメニューの販売を始めたほか、ジョナサンも対応している。健康志向の高まりを受けて、若い女性や体形を気にする中年男性などの需要を取り込む狙いがある。
(小川和広)
[日本経済新聞夕刊2016年10月20日付]
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