CD『インドカレー屋のBGM』 静かなヒット続く
最近、繁華街でインドカレー店が目に付くようになった。公式統計は無いものの、NTTタウンページ(東京・港)がまとめた電話帳の登録件数をみると「インド料理店」は2007年の302件から14年には1773件と約6倍に急増。急速に日本に浸透している。そんな中、ビクターエンタテインメント(同・渋谷)が出した編集CD「インドカレー屋のBGM」がロングセラーとなっている。10年ぶりに新作も出た。
インドカレー店に入ると、鼻をつくスパイスの香りとともに、甲高い女性の歌声が耳に入ってくる。うねるようなシタール、タブラの演奏と相まって耳について離れない。CDを企画した同社ストラテジック部の川口法博ディレクターもカレー好きで、ランチで店を巡るうち「どこも似たような曲がかかっている。一体この音楽は何なんだ」と気になったという。
調べた結果、インドの映画音楽、いわゆる「ボリウッド・ミュージック」と判明する。第1弾が出た05年当時、日本で流通するインドのポップスはほとんど輸入盤。国内発売に当たり「インドのヒット曲集と銘打っても一般の関心は呼ばない。日本人が好きなカレーに引き付けよう」と考えたという。
「千枚でもまずまず」な企画モノとしては異例の売れ行きで、05~06年に出した5作で計約2万5000枚のヒットシリーズに。宣伝広告も無いのにネットで口コミが広がった。「『謎の音楽』だから、気になってもどこで買えるか分からない人が多かった。家でエスニックカレーを食べながらBGMにしている人が多いのでは」と川口氏。
当初は収録曲の許諾を得るため、つての無いインドにメールを送るなど試行錯誤した。その後、大手芸能事務所、渡辺プロダクショングループの音楽出版社がインドの楽曲の権利を大量に所有していることが判明。「渡りに船」でトントンと続編を発売できる幸運にも恵まれた。
一時、アイドル部門に異動していた川口氏は今春、元の部署に復帰。9月に久々の新作「インドカレー屋のBGM デラックス」を出した。「長く離れていたのに、シリーズは全て廃盤になっていなかった。注文が続いている」と顔をほころばせる。
(明)
[日本経済新聞夕刊2016年10月19日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。