堆塵館 エドワード・ケアリー著
ゴミで蓄財した一族の城
文明社会における「ゴミの始末」は、社会の成熟度を表す指標だが、本書のターゲットは、ヴィクトリア時代の世界都市ロンドン郊外に堆積されたゴミの山。頂上には、ゴミで蓄財したアイアマンガー一族の堆塵館なる城がそびえ、数えきれない使用人と純化された血族が住む。まさに、近代のダークサイドを思弁する、おぞましくも美しきゴシック城が登場する。
この血族が面白い。生まれたときに、一族の女長から秘密の物品を贈られ、生涯お守りのように持ち歩く。この物品の魔法を感知する超能力少年と、使用人少女との運命的な出会いをもたらした事件から、異形の跋扈(ばっこ)する館の謎が解き明かされていく。凝った装丁も注目の、ゴージャスな傑作だ。
★★★★
(ファンタジー評論家 小谷真理)
[日本経済新聞夕刊2016年10月13日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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