お気に入りは紙の家具　移動簡単、自分好みに加工

子ども向けの紙製の家具が注目を集めている。段ボールなどで作られており、値段が手ごろで軽いところが特徴だ。持ち運びしやすいこともあり、まだ子ども部屋がない未就学児のいる家では、リビングに置くケースが多い。デザインや色使いも工夫されている。紙製ならではの魅力を探った。

「軽いので、子どもが自分で運んできて、絵本を読んだりお絵描きしたりして楽しんでいる」。東京都千代田区のマンションに住む30代の女性は息子（1）の笑顔を見て満足げだ。7月にインターネットで購入した幼児用の紙製の机と椅子を「とても気に入っている」。

以前はお風呂の椅子を自分で持ってきて絵本を読んでいた。「自分用の椅子と机がほしいのかなと思った。でも木製など本格的なものはまだいらないので……」。そこでたどり着いたのが紙製の机と椅子だ。リビングに置いて使っているが「色合いがシンプルなので部屋になじんでいる」と話す。

彼女が購入したのはコクヨのPasture（パスチャー）コドモダンボール家具シリーズ。椅子のデザインはヒツジとウシの2種類、机は赤い屋根が目を引く牛舎（ハウス）がモチーフだ。動物の背中に腰掛け、牛舎の屋根（天板）の上で絵本を読んだり絵を描いたりする。

椅子は机の中にぴったり納まる。牛舎には小窓があり、しまうと動物の顔がのぞく遊び心も施されている。「動物の世話をする感覚で、子どもが楽しく片付けできる」（アーツ&クラフツ事業部の安江篤史さん）

椅子、机それぞれ10～20分で組み立てられる。はさみやのりは使わず、説明書に従ってパーツを組み立てるだけだ。値段は椅子が2000円、机は3700円（ともに税抜き）。椅子は400グラム弱、机は1.5キロ弱と軽い。

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幼児向け紙製家具は収納も充実している。東京都調布市に住む30代の女性はベネッセコーポレーションの通販サイト「たまひよSHOP」で紙製の絵本棚「すっきり片づく　絵本が読みたくなるブックシェルフ」（税抜き2780円）を息子（2）のために購入した。もともとファイルを入れるボックスに絵本を入れていたが「息子がうまく絵本を取れずにいたので、絵本棚を購入しようと決めた」と話す。

木製も検討したが、使用期間がそれほど長いわけではなく、「粗大ゴミとして出すのは大変。処理が簡単な紙製にした」。絵本の表紙が見えるので、息子が自分で絵本を取りに行く機会が増えた。軽いため、掃除の時に簡単に動かせるのも魅力だ。

たまひよSHOPの商品開発担当の楠本憲嗣さんによると、同社の紙製家具の販売は好調。「今年春～夏の販売量は前年同期比30%増となり、安定的に成長している」という。

同社の製品も男女差を表す色合いやデザインではなく、落ち着いた色調で整えたリビングでもなじみやすい。ベージュやミントが人気だという。

「自分でハンガーを掛けられるのがうれしい」と話すのは埼玉県川口市に住む男児（6）。紙製のハンガーラックとチェストを幼稚園入園前に買ってもらった。自分で新幹線のシールを貼って飾り付けするほどお気に入りだ。高額な木製であれば長期使用を前提に大きめのサイズの家具を購入しがちなところだが、紙製はぴったりサイズを選びやすい。母親は「子どもが自分で服の出し入れをしてくれればと思い、購入した」。リビングに置き、登園前に子どもが着替える様子を見守っている。

この「クラフトハンガーラック&チェスト」（税抜き2290～6990円）は千趣会の通販ブランド「ベルメゾン」で購入できる。ハンガーラックや絵本を立ててディスプレーしながら収納できるラックが人気。「比較的安価で軽く、コンパクトに届けられるのも魅力」（同社）だ。

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無印良品の「じぶんでつくる紙管こどもイス」（大1900円、小1700円、税込み）は親子で一緒に作る楽しさを体験できる。再生紙でできた厚紙を付属の接着剤でつけるだけ。子どもは色紙を貼ったりマジックで絵を描いたりして「自分好みのオリジナル商品に仕上げられる」（良品計画・生活雑貨部の松木寿子さん）。各地で開催しているワークショップも好評だ。イスと組み合わせて使えるデスク（税込み4980円）もある。

「自分の家具があると喜ぶ子どもは多い」と松木さん。紙製で安価なため、シールを貼ったり絵を描いたりしても気にならず、子ども専用に与えられるのは親としてもうれしいものだ。収納棚はお片付けの練習もできる。子どもと楽しく過ごすためのツールともいえそうだ。

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（商品部　黒瀬幸葉）

［日本経済新聞夕刊2016年10月12日付］