冷凍食品、凍らせてもなぜおいしいの?

NIKKEIプラス1

PIXTA
PIXTA

冷凍食品、凍らせてもなぜおいしいの?

スーちゃん 秋の遠足でお弁当を持っていったよ。お母さんは働いているから、冷凍(れいとう)食品を使っているんだって。家で作った食材やおさしみをこおらせると、おいしくないんだよね。冷凍食品はなぜおいしいのかな。

急速に冷やすと氷が細胞をこわさないんだ

森羅万象博士より 今の冷凍食品は電子レンジでもサクサクとしたコロッケやトンカツなどができるし、味もよくなった。お弁当作りの強い味方だね。

冷凍食品がおいしいのは凍(こお)らせる技術にひみつがあるんだ。食品を凍らせるとおいしくなくなるのは、中の水分が氷になるときに大きな結晶(けっしょう)ができて、食材の細胞(さいぼう)をこわしてしまうからだ。

例えば、マグロのさしみを家の冷凍室に入れてこおらせた後に解凍すると、赤い汁(しる)がいっぱい出ている。これはマグロの細胞がこわれて中の肉汁が出てしまったからなんだ。うまみがにげておいしくなくなってしまう。とうふを凍らせると、中がすかすかになってまずくなる。

水はセ氏0度で凍り始めるのは知っているよね。食品の中の温度がマイナス1度からマイナス5度の間は氷が大きな結晶になりやすい。食材の中の水分は氷に吸いよせられて集まるから、大きい結晶になりやすいんだ。氷の結晶がふくらんでいって、細胞がこわれる。

家にある冷蔵庫の冷凍庫は中の温度がマイナス18度くらいだ。このくらいの温度だと、食材の中は少しずつ凍るから、氷の結晶が大きくなりやすい。だから冷凍食品の工場では、マイナス30度以下の風を強くふきつけて急速に凍らせる。30分以内に食品中の水分のほとんどを凍らせて、氷の結晶が大きくならないように工夫しているんだ。

例えば、マグロをとる遠洋漁業の船にある冷凍庫は、中の温度がマイナス60度になっている。ここまで温度が低いと、肉の成分が悪くなりにくいから、鮮度(せんど)を落とさずに長期間保管できるそうだ。

コロッケやからあげのように高い温度で調理している加工食品は細胞がこわれている。魚や野菜といった生鮮食品のような氷の結晶が悪さをする問題は起こらない。でも、冷凍食品の工場では急速冷凍している。なぜだろう。

これもおいしくする工夫なんだ。家でつくったコロッケを凍らせて電子レンジで温めると、ころもがベチャベチャになってしまう。これは中のタネにある水分がころもに移動したからなんだ。

コロッケの場合、ころもは油であげていて水分はほとんどないから、タネの水分が移りやすい。だから冷凍食品の工場では、あげたてのコロッケを急速冷凍し、ころもにタネの水分が移るのを防いでいるよ。

凍結方法のほかにも工夫している部分がある。タネところもの間には、油の層をはさんでいる。この油がタネからころもに水分が移動するのをブロックしているんだ。

最近はカイワレダイコンなどにふくまれる不凍たんぱく質という物質を使った冷凍食品も出てきた。卵焼きにこのたんぱく質を交ぜると、氷の結晶が大きくならない。冷凍の卵焼きをゆっくり解凍すると、味や食感は凍らせる前と同じだそうだ。冷凍食品がおいしくなったのは、さまざまな工夫があるからなんだ。

■フリーズドライにも応用

博士からひとこと インスタントのみそ汁やコーヒー、カップめんなどの製造にも、冷凍技術が使われている。食品を急速冷凍した後に気圧を下げ、凍らせた食品をゆっくりあたためると、氷が気体になって出ていく。加熱して水分を蒸発させるやり方よりも風味や栄養分が残りやすいそうだ。凍らせてから乾燥(かんそう)させるから、フリーズドライ(凍結乾燥)食品と呼ぶようになった。
ふつう水は氷から水、水から水蒸気へ変化する。フリーズドライでは、氷から一気に水蒸気になる「昇華(しょうか)」という現象を利用している。製氷室の氷が時間がたつと小さくなるのも昇華が起きているからなんだ。

(取材協力=石井寛崇・ニチレイ研究員)

[日経プラスワン2016年10月8日付]

注目記事
今こそ始める学び特集