おこわ、レンジでおいしく作りたい
加熱10分、混ぜたら5分
もち米でおいしいおこわを「私がつくったのよ」と言えたら、料理上手と株が上がるはず。もち米1合(180ミリリットル)に、1割ほど少ない水加減で、普段やる自己流土鍋の早炊きで炊いてみた。
浸水は10分、点火後沸騰したら弱火にして4分加熱する。焦げ付かないよう10秒だけ強火にして火を消す。10分の蒸らしでは生の切り餅をかじったような味だったが、30分ほど放っておくと、余熱でつやつやのおこわになった。でも味と風味は蒸したものにはかなわない。どうやら加熱の加減が重要らしい。
土鍋炊きより 甘み感じる
簡単調理でつくれる電子レンジで最善の方法を探ろう。水量はもち米の0.9倍、浸水は少し長めの20分とする。最初に500ワットの電子レンジで5分加熱してみた。耐熱ガラスのボウルを使い、ラップをふんわりかける。レンジの扉の窓からもち米の変化を目で確かめる。水は沸き始めていたが、米粒は固まって沈んでいる。5分では短すぎる。
追加で5分(合計10分)加熱する。今度は水が減って米粒の外側が透き通ってきた。でも中心の色が違い、芯が残っている。まだ足りない。
さらに5分加熱。開始から15分たったもち米は長さが2倍近くに伸び、全体が膨らんで、透き通ってきた。コメではなく、おこわに近づいているものの、白濁状態のものが一部残る。ちょっと食べてみると、土鍋早炊きのもち米と比べ、独特の甘みがする。歯応えもしっかり出た。
あと5分加熱してみよう。合計20分だ。できたもち米の歯触りは若干硬くなった印象だ。ただ、火が通っていないもち米は減っておらず、加熱時間を延ばした効果はほとんどなかった。
うまいご飯炊きの紹介活動をしている「ごはん同盟」の、しらいのりこさんに実験の結果を持って改善点を相談すると「10分加熱したところで、上下をかき混ぜてから再加熱するとムラなくおいしくなりますよ」との助言が返ってきた。家で実践する。かき混ぜ出来上がった2合のもち米は計15分加熱で、つやつや、ホクホクの味が実現した。
入れるタイミング 具材ごとに異なる
次の段階は具材でいかにおいしくできるか。スーパーで食材を買い集め、基本の作り方で味を比べてみる。
まずは鶏肉に挑戦した。胸肉を4つほどに切り分けた鶏おこわは、肉の中まで火が通っておらず残念な味だった。1.5センチメートル角くらいの大きさに切りそろえると、鶏肉はボウルに浮かんでゆらゆら揺れながら、火が通るにつれ色が白くなっていった。完成後も肉質は硬くなりすぎず、全体的にムラなく仕上がった。適度に味がしみこんでいる。
次は秋の王様、サケだ。切り身のままと小さく切ったものを試したが、どちらも身が締まり過ぎて、パサついている。どうしたらいいのか。
思いついたのが後入れ作戦だ。サケは軽くゆでて火を通し、もち米と一緒にするのは沸騰してから。別の鍋でゆがくと、切り身の大きさや厚みに応じた火の通り具合を調整できる。サケの表面の色が変わったら鍋から引き上げる。完成後に皮や骨を取り除き、さっくり混ぜ合わせる。サケがジューシーで、なまぐささはない。彩りも鮮やかだ。
試すうちに法則が見えてきた。サツマイモやサトイモなどレンジ加熱でほどよく火が通る具材は、もち米と同時に入れる。具材の水分が抜けず、レンジ特有の硬い仕上がりにはならないからだ。もち米や水と一緒に加熱したのがいい方向に働くようで、具材もおこわも素材の甘みが出た。
火が通り過ぎる食材は別にゆでて後で加える。例えばきのこ。水分が出やすく、同時加熱ではべちゃべちゃになる失敗が多かった。カキなど貝類は身が縮むから断然後入れ。この時、ゆで汁をもち米に加えると、風味が増して味がしっかりついた。
最後に赤飯を仕上げたい。とはいえ難しすぎるので電子レンジ調理に詳しい料理研究家の村上祥子さんに聞いてみた。「水煮の小豆を使ってみては」。基本のレンジ炊飯に、加熱済み食材を後乗せするという。確かにこれならカンタン。でもあずき色と赤飯の味がきちんと出ていた。家庭料理としては合格点だ。
一番の収穫はおこわの「懐の深さ」を知ったこと。食材の特色と加熱の加減さえつかめば、組み合わせは無限に広がる。文明の利器を使ったお手軽製法ながら、最高傑作の「サケとギンナンのおこわ」は食感の異なる食材の塩味と甘みの調和が絶妙で、ついつい食べ過ぎてしまった。
1合でも作れて便利
「パンどころ」神戸出身の私は、ごはんを一度も口にしない日がある。連日のおこわ試食はつらいかなと思いきや、意外にも満足度が高かった。多様な具材に加え、もち米の食感に飽きはこなかった。
電子レンジおこわの利点は1合から作れること。一人暮らしの人、忙しいときや小腹がすいた時の強い味方になりそう。もち米は小型スーパーの店頭などでも1キロ入りを買えるので、思い立ったら気軽に作ろう。山菜の水煮や天津甘栗など出来合いの具材を使って後乗せすれば、簡単に楽しめる。
(南優子)
[日経プラスワン2016年10月8日付]
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