AIアプリは第2の頭脳　声で記録、生活らくらく管理

「スーパーであした牛乳を買う」「水曜日にゴミ出しをする」。やるべき事は多いのに、忙しいとどうしても忘れてしまう。アプリ「ピクレトリ」はスマホを通じて、やるべき事を前もって教えてくれる助っ人だ。

「いつ」「どこで」「何をする」のか、マイクに話しかければ数秒でメモしておける。東京都在住の大江沙季さん（29）は「忙しいから、声で記録できるところが気軽でいい」と語る。

例えば「あした薬局で目薬を買う」と話しかけると、近くの薬局の候補リストが表示される。目的の店が決まってなければ「どこかの薬局」を選択。指定した期間で移動中に薬局に近づくと、アラームが鳴って目薬を買うよう知らせてくれる。全地球測位システムが位置を検知し、半径30メートル～5キロ圏内まで設定できる。事前に特定の場所を登録する機能で自宅の場所を指定しておけば、「家についたら」という言葉に反応する。

ピクレトリは単なるメモのアラームではなく、自然言語処理というAIを使っているところがポイント。話しかけた内容から的確に地名のリストを出す役割を果たしている。

開発したネクストリーマー（東京・板橋）の向井永浩最高経営責任者は「話しかけた地名データを蓄積すると賢くなり、地名の選択肢が増える」と話す。利用者は主婦など女性が多い。

アプリ「ブリッパー」は花や動物など、見たものの名前が分からないときの検索に便利。カメラを対象にかざすと関連情報をネットから自動で引っ張ってくる。犬の種類など形や大きさが違ってもAIが色や形状など特徴を抽出して分析する。

「思い出せないあいまいな疑問がある時、文字入力では探しにくい」と語るのはブリッパー・ジャパン（同・渋谷）のショーン・ニコルス社長。画像認識のAIが役に立っている。

利用者がかざす対象が多いのは映画のポスターや動物、植物、芸能人・スポーツ選手の顔が多い。ブリッパーはもともと、広告ポスターにスマホをかざして拡張現実を楽しむアプリで、英国のベンチャー企業が開発した。日本ではすでに100万ダウンロードを超えている。

見たものを検索できる機能は6月から追加し、すでにポスター9万種、企業ロゴは2万3千種類学習している。今後はAIの認識精度を高める。「ゴボウ」「レンコン」など、日本でよく使う単語も追加中。画像を読み取った後に出る検索結果はまだ英語だが、年内にも日本語で読めるようにするため、開発を進めている。

複雑な問いかけをしたい場合は、米アップルの音声アシスタント「Siri（シリ）」やNTTドコモの「しゃべってコンシェル」が知られている。「しゃべってコンシェル」はアプリとしてダウンロードでき、キャラクターとのやりとりをチャット形式で見ることができる。「明日の天気が知りたい」「7時に起こして」などと、話しかけることによって入力すれば、ネット検索や設定を代わりに実行してくれる。

AIは質問した内容を大量に蓄積し、文脈から言いたいことを推定する能力を日々磨いている。アプリを使えば使うほど、手元の助っ人はどんどん賢くなっていく。

（企業報道部　薬文江）

［日本経済新聞夕刊2016年10月6日付］