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ニッキィの大疑問

トヨタや日産の「自動運転車」 いつから乗れる?

2016/10/3 日本経済新聞 夕刊

 最近、新聞やテレビで自動運転車の話題を目にすることが多いわね。わたしたちも、すぐ自動運転車に乗れるようになるのかな。

 自動運転車をテーマに、神野美保さん(51)と中島菜穂子さん(52)が中山淳史編集委員の話を聞いた。

 条件付きながら、自動運転が可能になったと聞きました。

 「日産自動車が8月末に発売したミニバン『セレナ』は、一定条件で自動走行できる機能があります。ドライバーがアクセルやブレーキ、ハンドルの操作をしなくても、車間距離を保ちながら高速道路を走り続け、カーブも曲がれます。ただし、自動で車線変更はできず、一般道での自動運転はできません。これは、米運輸省の高速道路交通安全局(NHTSA)が定めた自動運転の基準で『レベル2』の水準です」

 「コンピューターや人工知能(AI)の技術の進化で、自動運転がかなり実用化に近づきました。日産は2018年には車線変更も可能にし、20年には一般道でも自動運転できる車の発売を目指しています。トヨタ自動車も、19~20年にレベル2に相当する自動運転車を発売するようです」

 自動運転にも段階があるのですか。

 「NHTSAの基準で最も低い『レベル0』は、自動運転機能の無い一般の車です。『レベル1』は、前方に障害物がある場合に衝突を予測して自動的にブレーキが作動するなど、先進運転機能を持つ車が相当します。こうした先進運転機能を複数連動させて、ドライバーが一定の制御を車に委ねられる水準になると『レベル2』です」

 「『レベル3』では、機能的には人間がまったく関与せず自動運転できますが、いざというときは人間が制御を肩代わりしなければなりません。『レベル4』になると、人間は目的地を設定するだけで、完全に自動運転できます」

 「レベル4を実現するには、昼も夜も、太陽が照りつける日も大雨や雪の日も、ほかの車や歩行者の姿、信号や道路状況など様々な情報を正確に認識しなければならないため、かなりハードルが高くなります。それでも、米フォード・モーターは21年までにレベル4の技術を搭載した車を発売すると発表しています。AIの進歩や、無線通信の高速大容量化が進めば、不可能な話ではありません。車が完全に無人の状態でも自律的に道路を走る日は遠くない将来、必ずやってきます」

 自動車メーカー以外の企業も開発に力を入れているようですね。

 「米グーグルが自動運転車の開発に力を入れていることはよく知られています。ただ、グーグルは自社で車を売ろうとしているわけではないようです。3次元の地図情報など様々なデータを蓄積し、通信技術を駆使して車を制御する基盤技術(プラットフォーム)を創り出すのが狙いです。スマートフォン(スマホ)の基本ソフト(OS)『アンドロイド』を世界中のスマホメーカーに供給しているのと同様に、世界中の自動車メーカーに自動運転プラットフォームを供給するつもりなのでしょう」

 「自動運転を巡っては、様々な企業が『オートノミー』『コネクテッド』『モビリティー』の3分野に分かれて競争しています。自動車メーカーが開発しているのはオートノミーで、これはインターネットにつながっていないパソコンのようなものです」

 「実際にドライバー無しでも自律的に走れるようにするには、データセンターとの地図情報などのやり取りを含むコネクテッドの技術が必要です。この市場をグーグルや、マイクロソフト、アップルなどのIT企業が狙っています。3つ目のモビリティーは、コネクテッドの技術を活用して車を将棋の駒のように操りながらサービスを展開しようとするもので、車の相乗り(ライドシェア)ビジネスを手掛ける米ウーバーテクノロジーズなどが関わってきます」

 課題はありますか。

 「技術的には実現可能でも、様々な規制が障害になります。日本も加盟する『道路交通に関する条約(ジュネーブ条約)』は、車に運転を制御できるドライバーが必ず乗っていることを前提としており、レベル4実現には条約改正が必要です。事故が起きた時に誰が責任を負うのか、運転免許制度をどうするのかなど、社会の様々な仕組みの整備が欠かせません」

■ちょっとウンチク
新しいビジネスの好機に
 自動運転が普及すると身の回りの何が変わるのか。様々な場所でシミュレーションがされているが、共通するのは、交通事故が劇的に減る、高齢者の車の利用が容易になり幸福感向上や健康長寿に資する、渋滞が緩和されて物流が円滑になる、新しいビジネスが生まれる――などの点だ。
 英国のコンサルティング会社は「シェアリングエコノミーが進んで車の台数が適度に減少し、必要とされる道路や車線、駐車場の数も減る」と予測する。同社が想像する未来の町の風景が現在との対比でインターネット上に紹介されているが、車が占有する場所、面積が将来、劇的に減る可能性もあることがわかり、驚く。
 車が減れば自動車メーカーは対策を考えねばならない。一方で道路や土地が別の用途に回れば、経済の活性化につながるとの見方もある。自動運転は「燃料消費がこれだけ改善した」という類いの発明ではない。日本のグランドデザイン力を根本から問い直すような技術革新になる可能性もある。
(編集委員 中山淳史)
■今回のニッキィ
神野 美保さん 主婦。東京都内や国内各地の美術館巡りを楽しむ。「絵に心が癒やされ、ストレスを解消できます。港区白金台の松岡美術館が特にお気に入りです」
中島 菜穂子さん 団体職員。最近、ベトナム料理などエスニック料理の教室に通っている。「青パパイアなどの食材を手に入れてタイ料理作りも楽しんでいます」

[日本経済新聞夕刊2016年10月3日付]

 「ニッキィの大疑問」は月曜更新です。次回は10月17日の予定です。

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