ほくほく石焼きいも どうしてあまーいの?

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ほくほく石焼きいも。どうしてあまーいの?

スーちゃん 近くのスーパーで石焼きいもが売っていたよ。買って食べたらおいしかった。同じサツマイモでも電子レンジで温めるとあまりあまくないけど、石焼きいもはすごくあまい。なんでそうなるのかな。

じっくり焼くとデンプンが糖に変わるからさ

森羅万象博士より 今はとりたてのサツマイモが出回るころだ。生のサツマイモにはデンプンがたっぷりふくまれている。その量は重さの30%くらいになるそうだ。デンプンはコメやジャガイモにも多く入っているけど、焼いたりむしたりしても、サツマイモのようにあまくはならない。なぜだろう。

サツマイモには、ジャガイモやコメには少ない「アミラーゼ」という物質が入っているんだ。学校では、食べ物を体に吸収されやすいように分解する消化酵素(こうそ)として習うよ。アミラーゼは口の中のだ液にもふくまれている。

このアミラーゼには、デンプンを分解して「麦芽糖(ばくがとう)」というあまい物質にする働きがある。デンプンはブドウ糖という小さなあまい物質でできている。だけど、ブドウ糖がくさりのようにつながっていて、食べてもあまくない。麦芽糖まで小さくなると、あまく感じるようになる。

アミラーゼはデンプンのくさりを切りきざむハサミのようなものだ。サツマイモに熱を加えて調理する間にアミラーゼの働きで、デンプンが麦芽糖に変わる。ごはんをかみ続けているとあまくなるのも、コメのデンプンが麦芽糖に分解されるからだ。

サツマイモをラップでくるんで電子レンジで加熱したときに「あれ、あまくない」と感じたことはないかな。石焼きいもだと、すごくあまくておいしいよね。この差はなぜうまれるのだろう。実は加熱の仕方のちがいなんだ。

アミラーゼは温度がセ氏40~60度でよく働き、90度を超(こ)すとほとんどがこわれる。一方、サツマイモの中のデンプンはセ氏60~75度のときに分解されやすい。中の温度がセ氏40~75度の時間が長いとアミラーゼがよく働いて、デンプンも分解されやすい。だから麦芽糖が多くできるんだ。電子レンジを使うと、イモの中がすぐに熱くなってしまうから、デンプンが分解される時間が短くなってしまう。

石焼きいもは火であぶった石をサツマイモにかぶせてじっくり焼く。石の熱がゆっくりイモに伝わるので、アミラーゼが働く時間が長くなる。グラフにすると、あまくなる温度帯を時間をかけてゆっくり通過しているんだ。

じっくり加熱すると、イモの中にある水分が蒸発する。麦芽糖の濃度(のうど)が増して、あまみが増したように感じる。

自宅で焼きいもを作るなら、電子レンジよりもオーブントースターの方が向いているよ。

実は、アミラーゼはサツマイモを保管している間にも働いて、デンプンを少しずつ麦芽糖に変える。水分も蒸発して少しずつ減っていくから、よりあまくなる。ただ、生のサツマイモは冷やしすぎるといたみやすいから、セ氏10度くらいのすずしい場所にかげ干しするのがいいそうだ。

収穫(しゅうかく)から2カ月くらいたった1~3月がサツマイモが最もおいしい時期にあたる。冬に石焼きいもを食べるのは理にかなっているんだね。

■消化酵素、洗剤にも活用

博士からひとこと 食物の養分はデンプン、たんぱく質、脂肪(しぼう)の3つに分けられる。食物が体内で吸収されやすい養分に変わることが消化だ。口のだ液や胃の胃液、小腸で出る腸液など食物を消化する液を消化液と呼び、実際に消化しているのが消化酵素(こうそ)だ。アミラーゼのほかに、たんぱく質を分解するペプシンやトリプシン、脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解するリパーゼなどがあるよ。
リパーゼの働きは別のところでも役立っている。それは洗剤(せんざい)の中に入っている酵素だ。油よごれは脂肪なので、脂肪を分解するリパーゼの仲間の酵素を使うと、よごれが落ちやすくなるんだ。

(取材協力=奈良信雄・順天堂大学特任教授、浅賀宏昭・明治大学教授)

[日経プラスワン2016年10月1日付]

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