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雨だからシチューはどう? IoTでオーブンも進化 好み・予定を先回り

日経プラスワン

2016/10/1付 日経プラスワン

あらゆるものをインターネットにつなげるIoTが進化している。今やビジネスに限らず、私たちの日常に入り込んで暮らしを大きく変えるようになった。何がどう便利になるのだろうか。未来への道筋を探った。

シャープが9月に発売した「ウォーターオーブン ヘルシオAX―XW300」は音声認識や人工知能(AI)を搭載し、クラウドサービスを通して献立相談までできるという商品だ。使い勝手を徹底的に試してみた。

ヘルシオを無線LANでインターネットにつなげ、「おはなし」ボタンを押して話しかける。食材や料理ジャンル、料理名を指定すると、メニューが操作画面に4つ出てきた。「ほかには?」と聞くとさらに4つという具合。途中で内容を変えたくなったら「最初から」と伝えればいい。「300キロカロリー以下のメニュー」などのカロリー指定や「糖尿病向け」「高血圧向け」といったヘルシー料理の注文にも対応するのがユニークだ。

■「アサリ」「ナス」聞き取り難しく

笑ってしまったのは「アサリ」と告げたとき。貝料理でなく朝ご飯のメニューが並んだ。「ハス」や「ナス」などは「ごめんなさい、もう一度言って下さい」を繰り返した。言葉の聞き取り機能の強化は今後に期待したい。

メニューを選んで材料と調理方法を知るにはスマートフォン(スマホ)が必要だ。専用アプリを入れておくと、ヘルシオ側で保存したメニューの内容が自動的にアプリに送られてくる。先にスマホでメニューを検索しヘルシオに送ることもできる。

作った料理は30以上。「から揚げ&蒸し野菜&ゆで卵」は全材料を入れ一度で完成する同時調理なのに、ゆで卵が完璧。「さんまの香味フライの梅肉ソース」はカリカリでおいしい。献立の検索だけでなく、加熱時間など自分で考えた手順をアプリで編集し「我が家のメニュー」としてクラウドに保存もできる。際限なくメニューを増やせるのはIoTならではの機能だ。

聞いたことに単純に答えるだけでなく「雨が降っているからシチューなんかはどう?」「昨日はいため物だったから今日は蒸し料理はどう?」と天候や履歴を踏まえて提案してきたかと思えば、「昨日作ったアスパラ肉巻きは星で言うといくつかな?」と聞いてくることもある。

このヘルシオの実勢価格は20万円弱だ。揚げ、蒸しなど複数の調理を1度にでき、おかずと炊飯、冷凍と常温素材の同時調理が可能などオーブン機能はかなり便利。ただ本体をネットにつなぐ設定が、中継器によっては難しいことも。機能を楽しむ前につまずかない工夫が欲しい。

IoTは家電以外のモノにも組み込まれ始めた。家電ベンチャー、Cerevo(セレボ、東京・文京)のスマートアラーム「クラウディス」はスケジュール管理ソフト「グーグルカレンダー」とネットで連携する。スマホに専用アプリをダウンロードし時間設定すると、その日のスケジュールに合わせてアラームが鳴る。アラーム時刻を毎日設定し直さなくても、書き込んだ日程次第で鳴る時間が変わるから便利だ。

「これからは掃除機や据え付け照明器具、イスだってネット接続できるようになる。電気を通さなかったモノもネットにつなげて生活を便利にしていきたい」とセレボ社長の岩佐琢磨さんは言う。

■光と音の交響 遊び心も踊る

エンタメ機能抜群なのがスマートシューズ「オルフェ」だ。個別制御できる発光ダイオード(LED)約100個を靴底に内蔵。パソコンやスマホを使えば音もかき鳴らす。軽快な動きとともに様々な色を点滅させ、音を響かせるダンスパフォーマンスを見ると、なんだか浮き浮きする。

オルフェはno new folk studio(nnf、東京・千代田)代表の菊川裕也さんが、ネットを介して資金を集めるクラウドファンディングで商品化した。IoTは遊び心を暮らしに結びつける技術でもある。

IoTビジネスの種を育成するMistletoe(ミスルトウ、東京・港)の孫泰蔵社長は「5~6年後には、まさにあらゆるものがインターネットにつながる」と予測する。街の植栽の一つ一つにセンサーを埋め込めば、生育状況をネットで集中管理できる。人体にセンサーを付ければ自分自身の健康状態を常に管理してもらい「今日のランチは野菜を多めに」などと助言を得られる。

ならば、排せつ物を入れれば異常を検知するセンサー付きのボトルで、在宅健康診断も可能ではと想像が膨(ふく)らむ。「そうやって生活の安心・安全につながるのもIoTのメリット」と孫さんは言う。身の回りにあるモノを通じて自分までも「見守る」世界。そんな未来はすぐそこにある。

記者のつぶやき

■便利な社会 どう生きる?
「IoTと人工知能の発達で、日常的に気を煩わせていたことをコンピューターが担ってくれる」と孫社長。有能な秘書が付くようで、そりゃ便利だ。その分ほかのことに時間を使えるが「それで充実した生活が送れるか暇を持て余すかは、その人次第。自分が提供できる価値を深く考え、実行していく事が大切になっていく」。どんなに便利になっても、人間は頭を働かせなくっちゃということか。
(福沢淳子)

[日経プラスワン2016年10月1日付]

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