ベランダで格別の一杯 ひと手間かけ、くつろぎの場

マンションの味気ないベランダに一手間かけ、くつろぎの場として楽しむ人が増えている。見栄えが一変したベランダで楽しむお茶やお酒は格別だ。ただプロに頼むにせよ自力で改修するにせよ、マンションではベランダの利用について厳格なルールもあるので注意も必要だ。

タイルと家具 もう一つの部屋・リフォームしたベランダでお茶を楽しむ今井さん夫妻(東京都内)

「夜には照明を持ち出してワイン片手にのんびり。気分の切り替えにもってこい」。こう話すのは東京都世田谷区の今井統童さん(34)。妻のあゆみさんも「外に部屋が1つ増えたよう」と笑顔で語る。

分譲マンションの約11平方メートルのベランダの床はマーブル調のタイルが敷かれている。手すりには目隠しになる小棚付き木製フェンスを設置。家具や植物がバランスよく置かれ、狭いながらもまとまりのある空間となっている。「タイルを敷いて床の色や高さがちょうど居間と同じになったことで奥行き感も出た」と今井さんは満足げだ。

利用したのは屋上緑化を手掛ける東邦レオ(大阪市)の床タイルや家具がセットになった「ファーストリビング」という製品。一部は買い足したが、設置費込みで30万円ほどだった。

このセットには、ローテーブルを設置するものなど全4種類ありいずれも10平方メートル程度のベランダなら20万~30万円台。軽く楽に移動でき、掃除など手入れが簡単にできる。「設置した物が風で飛散したり、子供のいたずらで外に飛び出したりしないように、危険防止のため床と固定するベルトを設けるなど安全性にも配慮した」(東邦レオの堀川範幸ファーストリビング事業マネージャー)

「マンションは閉鎖空間なのでベランダの開放感は貴重。これからの秋の夜長、ここで過ごす時間が楽しくなりそう」と今井さんは期待する。

DIY(日曜大工)でも案外、簡単にベランダを快適に改修できる。手間を惜しまず作り上げていく楽しみを味わいたい人にお勧めだ。

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「室内のコーディネートは気に入っているが、毎朝カーテンを開けると無機質なベランダが目に入り気がめいっていた」と語るのは横浜市のマンションの8階に住む樋口龍馬さん(32)。そこで一念発起し、5月の連休を利用して初挑戦のDIYでべランダを改造した。

掃除の後、床に木製ジョイントパネルを敷き詰めた。エアコン室外機や避難ハッチがあるところには敷けないため、事前に位置を計測して設計図面を引き、必要枚数を割り出した。パネルには防腐剤を塗るのもポイント。あとはパネルに家具、装飾品を設置する。マンションのベランダは大規模修繕時には原状回復しないといけないため、通常は床にねじ留めや接着剤を使うことはできない。

結局、樋口さんの8平方メートルほどのベランダのDIYに要した時間は掃除や買い物も含め3日で、費用は4万円台。ベランダで過ごす新たな習慣ができた樋口さんは「単純に外の風に当たるだけで気持ちいい。この夏はベランダでコーヒーを飲み続けた」という。

ウィル(兵庫県宝塚市)が運営するガーデニング用品の通信販売「WILLベランダガーデン」店長の坂本学さんによると、天然の木製パネルは、風合いが良く肌触りが柔らかいので素足でも心地よいという。さらに夏場は温度の上昇を抑え冬場は保温性があるなど、ベランダの気温調節にも効果があるという。「雨ざらしの環境だと傷んでくるが年1回ほど水性塗料を塗れば美しい風合いを保てる」

普段はモップやぞうきんで汚れを取る程度で大丈夫だが、パネルを外して床面をデッキブラシで大掃除する際は大量の水を一気には流せないので要注意。隣室や下の階に汚水が漏れないように、ゆっくりと排水するなど、気を付けたい。

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玉砂利を敷き坪庭風・(WILLベランダガーデン提供)

床の模様を変えるとベランダの印象は一変する。タイルや木製パネルよりインパクトが強いのが玉砂利だ。座って飲食することはできないが、玉砂利を用いて坪庭をしつらえれば、和風旅館のような空間も演出できる。溝にカバーをかぶせたり、溝の手前に角材を置いたりして玉砂利が排水溝に流れ出ないよう注意しよう。

自分好みのベランダ改修へ夢が膨らむが、マンションのベランダは共用部分であることを忘れてはならない。避難経路の確保、外観変更の禁止、大規模修繕時の原状復帰などは必須だ。マンションごとの管理規約でベランダの使い方に細かい決まりがあるケースも多い。「まずは規約を見て、判断に迷うことがあれば管理組合に相談して」と堀川さんは助言する。

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■火の使用や調理 ルールを守って
マンションのベランダでは火や煙、臭いの出る行為は禁止だ。バーベキューや七輪は無理だが、電気スチームクッカーなどを使うのも一考だ。ロウソク代わりの発光ダイオード(LED)キャンドルも雰囲気を盛り上げる。

(ライター 村樫 裕理子)

[日本経済新聞夕刊2016年9月28日付]

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