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映画は共通語 黒沢清さん、フランスに乗り込み新作

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フランスに単身で乗り込み、フランスの俳優やスタッフと、フランス語の映画を撮った。「ダゲレオタイプの女」(10月15日公開)の舞台は現代のパリ。19世紀の最古の写真術「ダゲレオタイプ」で肖像を撮っている写真家の屋敷で起こる恐怖と愛の物語だ。

かつて黒澤明がソ連で「デルス・ウザーラ」を、大島渚が仏で「マックス・モン・アムール」を撮った。巨匠が単身もしくは少数で乗り込み、慣れない外国で撮った作品には、図らずもその作家の資質が濃厚に表れる。今回も例外でない。

「よくも悪くもそういう風にしか撮れなかった。言葉はわからない。風俗、習慣、ましてや社会の空気感は全くわからない。だから僕の中からそれが出てくることはない。では僕から何が出ているかというと、根源的で無防備な欲望だ。こう撮りたい。こういうのが好きだ。そんなむき出しの欲望を出すしかなかった」

「面白い階段を見ると、昇っていく人を撮りたい。ドアがあるとギイっと開いたら面白いと思う。そんな幼稚な欲望をつぶやいたら、スタッフも俳優も大いに乗ってくれた。『それこそ自分たちが再現するものだ。どんどん言ってくれ。フランスの監督にはできない。それを待っていた』と言って、僕の欲望を最大限に拡大してくれた。だから恥ずかしい部分も含めて自分が出ているのだと思う」

生きているのか死んでいるのかが不明瞭なヒロインの存在感も東洋的だ。

「西洋の幽霊話の幽霊は最初から幽霊だ。でも日本の怪談は違う。四谷怪談のように最初は生きている。途中で死んで、主人公との関係が変わり、幽霊になって別の関係を築く。今回は西洋の幽霊と日本の幽霊の両方を登場させたかった」

「撮る」ことを巡る映画でもある。被写体に長時間の静止を強いる写真家はモデルに言う。「自然なしぐさを仕事だと勘違いしている。プロなら自分の一部をカメラにささげてみろ」。それは黒沢の真情か?

「デジタルの映像が普及し、誰もが操っている今、僕の仕事、映画の撮影って何だろう。ワンカット撮るのに美術、照明、カメラが準備し、俳優が何度かテストし、緊張状態の下でヨーイ、スタート……OK。今どき、そんな風に映像を扱うということ自体、アナクロニズムだ。照れも含めて特殊だという自覚はある」

「そんなことから解放されて、自由自在に撮って、ごく自然な何かを組み合わせて作る映画も多分ある。今後映画はそういうものになるかもしれない。でも悲しいかな僕がやってきたのは全然違う。ダゲレオタイプのころとほとんど変わらない。ダゲレオタイプも今の写真と違って一瞬を切り取るんじゃない。10分、20分じっとしている、その映像を固定する技術だった」

「映画は世界共通語」という確信を得た。

「撮る対象が違っても、こう撮りたいと言えば、なるほどそれは面白いとスタッフが反応してくれる。映画の言語は通じているという手応えがあった。日本で細々と試行錯誤してやってきたことは間違っていなかったと確信した。みんな言葉の問題で躊躇(ちゅうちょ)するけれど大丈夫。映画は大丈夫。映画そのものは共通だから」

◇     ◇

動きも光も 正確に制御

写真家の助手役で主演したタハール・ラヒムは35歳で「大学で黒沢清を勉強した」という世代。実際に黒沢演出を体験し感嘆の声をあげた。

「カットの構成、ビジョンの展開、光の操り方がすばらしい。人物の感情がどう動くのかを緻密に考え、その場を正確に制御する。オーケストラの指揮者のようだった」

フレームの中で俳優がどう動くかを指示するだけで、あらゆる感情を表そうとする黒沢の演出法は仏でも貫かれた。例えば、目の前の恋人が実は死んでいるのではないかという疑念にとらわれるたび、助手は恋人に触れる。「すると彼女の魅力によって、これは確かに現実だと感じ、彼の心が鎮まるんだ」とラヒム。

パリ在住のプロデューサー吉武美知子氏は「スタッフが『えーっこう撮るの』と驚きながら、黙々とことが運んだのは、みんな黒沢さんを尊敬していたから」と語る。仏や欧州の公的機関の助成金を得られたのも、かの地での黒沢の高い知名度があったからだ。

(編集委員 古賀重樹)

[日本経済新聞夕刊2016年9月28日付]

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