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ノマドワーク、油断禁物 情報漏洩リスクに自衛を

2016/9/29 日本経済新聞 夕刊

会社や自宅など決まった場所でなく、カフェや公共スペースなど好きな場所で仕事をするノマドワーカーが目立つようになった。自由な雰囲気で仕事ができるメリットの半面、周囲が公共空間であることによる注意点も多い。経験者や専門家に話を聞いた。

ノマドとはもともと遊牧民の意味。遊牧民のように居場所を変えながら社外で仕事をするビジネスマンを、ノマドワーカーと呼ぶようになった。

場所を自由に決めて仕事をするグラフィックデザイナーの森脇さん(東京都渋谷区)

増加の背景には、ITの進歩がある。今や、ノート型パソコンとスマートフォンさえあれば、資料の作成から取引先とのやり取り、社内会議まで、仕事のかなりの部分は、どこにいてもできるようになった。

無料の公衆無線LANや電源付きのカフェが増えるなど、インフラも整いつつある。成果主義の広がりや、ワークスタイルの多様化、柔軟化も、ノマドワークを後押しした。だが、実際にノマドワークをする時には、様々な注意が必要だ。

■盗み見防止

最重要なのは、情報セキュリティーの確保。公共空間に身を置く以上、パソコン作業の横から機密情報を盗み見られたり、電話の会話を聞かれたりする可能性がある。端末自体が置き引きにあうリスクもある。

万一の事態を防ぐにはどうしたらよいか。「『どこでもオフィス』仕事術」の著者で、経営コンサルティング会社、トリムタブジャパン(東京・港)代表の中谷健一さんは、「カフェでは、壁を背にできる場所を確保し、パソコンに盗み見防止のフィルムを貼ること」と、まず指摘する。

通信セキュリティーに関しては、店の脆弱な公衆無線LANではなく、個人の回線を使う。中谷さんは、「店内のWi―Fiを使う場合は、情報が盗みとられないようVPN(仮想プライベートネットワーク)を利用するのがよい」とアドバイスする。

トイレなどで一時席を離れる場合は、画面にパスワードロックをかけ、端末を市販の専用セキュリティーワイヤで物理的に席につないでおけば、情報や機器の盗難リスクは減る。一番確実なのは、一緒にパソコンを持っていくこと。ワイヤの使用は店に確認したほうがいいだろう。

電話も注意。会社名や個人名を平気で口にするのは、情報漏洩につながる。周囲に人がいる場合は、メールやチャットで用事を済ませるか、電話の場合は「頭文字など符丁を使った会話が次善の策」(中谷さん)。

また、店内での電話は周囲の迷惑になりかねない。中谷さんは、「周囲への注意と配慮を常に欠かさないことが一番大切」とノマドワーカーの心得を説く。

ノマドワーカーは常にパソコンを持ち歩いているが、移動中や思わぬ場所での紛失に注意が必要だ。クラウドソーシング大手のクラウドワークス(東京・渋谷)は、7月、「リモートワーク制度」を導入し、社員のノマドワークを応援し始めた。どこでどう仕事をするかは社員に任せているが、一つだけ徹底を呼び掛けているのは、酒の席にパソコンを持ち込まないこと。「酔って、パソコンをバッグごとどこかに置き忘れたり、落として壊したりするリスクがあるため」(担当者)だ。

■店変え集中持続

ノマドワークが仕事の効率を上げると受け止められたことも、この働き方が広がった原因だ。クラウドワークスの担当者は、「オフィスと異なる環境で仕事をすると、斬新なアイデアが浮かぶことも」と話す。ただ、仕事の効率を上げるには、それなりの工夫や心掛けも必要だ。

ノマド歴2年半のグラフィックデザイナー、森脇碌(ろく、33)さんは、「1カ所に長居すると、どうしても店員の視線が気になり仕事に集中できなくなるので、適当な時間に店を変えるとよい。休憩にもなる」とアドバイス。また「お気に入りの店をいくつか確保しておくと、ここでやれば仕事がはかどるというイメージができる」と話す。

中谷さんは、「いつでもどこでもできるという安心感が、逆に効率を下げることもある。自分で締め切り時間を設定して、一気に片付けるつもりで仕事をすることが大切」と話す。

(ライター 猪瀬 聖)

[日本経済新聞夕刊2016年9月26日付]

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