くらし&ハウス

暮らしの知恵

空き駐車場を開放し修繕費に マンションで外部貸し

2016/9/21付 日本経済新聞 夕刊

駐車場の空き区画の増加に悩む分譲マンションが珍しくなくなってきた。車を持たない居住者が増えたためだ。約3割を占める機械式駐車場はとりわけ維持管理費がかさむため、駐車料金収入が減れば保守や修繕の資金が足りなくなる懸念もある。解決策の一つが外部に有料で貸し出すことだ。

「このままでは修繕積立金が不足する」。東京都品川区にあるマンションでは、74台止められる機械式駐車場のうち15台分空いていた。駅に近く、車が無くても住民は不自由しないからだ。居住者向け駐車料金は月に約2万1000円。管理組合は年間378万円ほどの収入を失っていた。危機感を抱いた管理組合が相談したのが大手駐車場運営会社の日本駐車場開発だ。

サブリースはマンション駐車場の約3割を占める機械式を抱える管理組合の関心が高い

同社は空き区画を一括で借り上げ、月決めで特定の企業や個人に転貸するサブリースを提案した。全国の分譲マンション74物件で約1000台分を手がけている。貸出先の募集や反社会的勢力でないかなどの審査のほか、契約や集金、トラブル対応などの運営を代行する。

居住者が新たに車を買うなどして駐車場が必要になった場合は必要台数分を返還する。

管理組合と賃貸借契約を結び、稼働率にかかわらず定額賃料を組合側に支払う。目安は周辺相場の約半額で、今回は1台当たり月1万2000円に設定。15台で年に216万円になる。

駐車場を外部に貸して得た収入は収益事業として法人税などが課される。管理組合は受け取った賃料から支払い、税理士への報酬などを差し引くと、賃料の約7~8割を積み立てに回すことができるようになった。

同社と管理組合の契約を定期的に更新するなかで賃料が見直される場合もある。それでも「面倒な業務を代行してもらい、収支も改善するので安心」と男性理事(50)は納得する。

◇     ◇

サブリースが関心を集め始めたきっかけは国税庁が2012年に出した見解だ。管理組合が居住者から集める駐車料金は非課税だが、一部を居住者以外に貸した場合の課税対象があいまいだった。国税庁の見解では、居住者の利用を優先するなど条件を満たせば、課税対象は外部に貸した部分だけと明示した。それまで管理組合は、居住者部分を含め全体が課税されるのではとの懸念から貸し出しをためらうことが多かった。

外部に貸すには通常、居住者の4分の3以上の賛成が必要な管理規約の改定をしなければならない。議論に最低でも4~6カ月はかかるという。「部外者の出入りやトラブルが不安」と居住者が反対することもあるからだ。運営代行会社が、理解を得るため住民への説明会を開き、どんな借り手か概要を伝えたり、転貸先を法人に限ったりすることもある。

居住者が安心できるよう保険を活用する例もある。駐車場運営代行の大手、パーキングマーケット(東京・千代田)は、転貸する際、任意の自動車保険の加入者に限定している。万一、事故があった場合は、保険でしっかり賄う。24時間対応の電話窓口も用意する。日本駐車場開発も同様の仕組みだ。駐車場綜合研究所(東京・渋谷)は駐車場の構造によっては注意看板や監視カメラの新設などを提案する。

◇     ◇

タワー式は出し入れに手間がかかるが、防犯性などから好む人もいる

課税されても収益を得るには、近隣の駐車場需要と、まとまった空き台数が欠かせない。日本駐車場開発では、近隣の駐車料金相場が月に約2万円、転貸できる空き区画は8~10台前後を収益化の最低限の目安にしている。

古い機械式駐車場だと背の高いワゴン車や多目的レジャー車(RV)が入らないこともある。転貸するなら、平地で屋根があり停車スペースが大きい方が有利だ。ただ、機械式駐車場であっても密閉構造のタワー式を希望する人もいる。管理費がかさみ出し入れの手間はかかるものの、防犯や風雨の回避に優れるためだ。立地などによって、少ない台数でも転貸できる場合もある。

収支を改善する方法はほかにもある。マンション管理の三菱地所コミュニティ(東京・千代田)は料金を下げて居住者の利用率を上げたり、機械式駐車場を一部撤去して平置き型に変えたりするなどの提案をしている。運営代行会社が駐車場の改造や工事中の代替駐車場の確保を支援することもある。

不動産助言会社さくら事務所(東京・渋谷)のマンション管理コンサルタント、土屋輝之氏は、「駐車場の保守管理業者を変更することでコストを削減できる場合もある。サブリースも含め、まずは管理会社に相談するといい」と提案する。

◇     ◇

■代行業者選び 慎重に
参入が相次ぐサブリースは持続可能か疑わしい甘い条件を示す業者も存在する。複数社に試算を求め、説明の合理性や厳しい指摘もしてくれるかに注視し選ぼう。空き区画の放置は資産価値を損ねる。プロを交えて冷静に議論したい。

(企業報道部 大林広樹)

[日本経済新聞夕刊2016年9月21日付]

くらし&ハウス 新着記事

ALL CHANNEL