ネットでどこでも受診 遠隔診療、利用法や注意点は初診は対面 処方箋や薬、自宅で受け取り

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インターネットを通じて自宅に居ながら医師の診察を受け、薬も届く――。そんな未来の医療が実現しつつある。昨夏、「遠隔診療」が事実上の解禁となり、患者はネット環境とパソコンやスマートフォン(スマホ)があればどこでも診察を受けられるようになった。ただし、初診は対面の必要があるなど一定の条件もある。遠隔診療の利用法や注意点をまとめた。

「こんなに便利でいいのかと最初は驚いた」。そう話すのはお茶の水内科(東京・千代田)で遠隔診療を受けている都内在住の50代の男性。遺伝で血中のコレステロール値が慢性的に高くなる「家族性高コレステロール血症」という病気を患い、動脈硬化を予防するため薬を飲み続けている。

遠隔診療を利用するまでは月に1度、週末に通院していた。土日は混雑するので、同じ薬をもらうだけなのに半日がかりだったという。今はスマホのアプリを通じて好きな時間を予約しテレビ電話で診察を受けている。「治療がとても楽になった」と男性は喜ぶ。

お茶の水内科は昨年11月に遠隔診療を始めた。一度診察に来た患者のうち、症状が安定していると医師が判断し、本人が希望する場合に利用できる。患者は専用アプリのテレビ電話を通じて受診し、薬の処方箋を自宅に送ってもらう。支払いもオンライン決済だ。

現在、30~60代の患者が月に100人以上利用する。院長の五十嵐健祐氏は「働き盛りの人が多い。出張先のホテルから診察を受ける人もいる」と話す。

遠隔診療は離島やへき地しか利用できないとされていたが、昨年8月に厚生労働省の通達によって事実上解禁。IT(情報技術)ベンチャーなどが遠隔診療のシステムを相次ぎ開発し、現在は数百の医療機関で利用可能とみられている。

遠隔診療を受けるにはどうすればいいのか。医療機関向けに遠隔診療システムを提供するメドレー(東京・港)の島佑介執行役員は「まず通院できる範囲で遠隔診療を導入している医療機関を探す必要がある」と説明する。

「通院」を前提としているのには理由がある。保険診療を受ける場合、初診は必ず対面でなくてはならない。「血液検査や触診など病気を診断する上で対面診察は欠かせない」(島氏)ためだ。さらに、検査などのための定期的な対面診察も必要になる。遠隔診療を利用する場合でも体調や病状が優れないときには、実際に医療機関で受診した方がよい場合もある。

また遠隔診療を利用できるのは症状が比較的安定した病気の患者に限られる。高血圧や糖尿病などの生活習慣病や、花粉症などアレルギー性疾患、禁煙外来など病状が急激に悪くならない疾患が対象として想定されている。症状があまり変わらず問診だけで薬を処方してもらっている患者は遠隔診療に向くといえる。

上手に利用すれば通院にかかる時間がぐっと減り、生活習慣病など長期的な病気の治療にも取り組みやすくなる。遠隔診療を受けられる医療機関はまだ少ないが、近くに導入しているところがあるようなら利用を検討してはどうだろう。

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拡大する市場 制度に課題も

患者にとって通院の負担が小さくなる遠隔診療。これまで仕事の都合で通院が難しかった人や近くに医療機関がない高齢者なども受診しやすくなり、病気の予防や早期発見につながると期待されている。

調査会社のシード・プランニング(東京・文京)によると、遠隔診療関連サービスの国内市場規模は2020年度には16年度見込み比約2.5倍の192億円に拡大する見通しだ。着実な普及が見込まれている。

ただし、現在の診療報酬制度は対面での診察が前提で、オンラインでの診察はほとんど想定されていない。現時点では医療機関にとって遠隔診療導入のメリットは小さく、普及への大きな課題となっている。

また現在は薬剤師による対面での服薬指導が義務づけられている。院内調剤ができない医療機関は処方箋しか送れないため、患者は薬を受け取るために薬局まで出向かなければならない。今後、オンラインでの服薬指導が認められれば薬の直接配送も可能になり、遠隔診療の普及に弾みがつくだろう。

(二村俊太郎)

[日本経済新聞夕刊2016年9月15日付]

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