サッカーと愛国 清義明著
スタジアムから差別を考察
スポーツという「枠」が思考の密度と圧を高める。本書はその好例だ。大好きなサッカーの最前線にうごめく差別を見聞、そこから外の世界を考察する。スタジアム応援席での排他行動と街頭におけるヘイトスピーチは無縁ではない。
サポーターであることは階層や年齢を超える。「私たち」の居場所として孤立を救う。他方で「私」に対する寛容を削り、たとえば人種やセクシャリティーへの偏見をもたらす危険もつきまとう。
立場の異なる国内外当事者の声を明瞭な文体で紹介、現場のジャーナリズムと書斎の論考を両立させた。イスラエルでの親アラブ的クラブの存在など、サッカー=右派にあらずの実例は興味深い。
★★★★
(スポーツライター 藤島大)
[日本経済新聞夕刊2016年9月15日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。