「fox capture plan」 現代版ジャズロック、疾走
ピアノ、ベース、ドラムによる3人組若手ジャズグループ「fox capture plan(フォックス・キャプチャー・プラン)」が勢いづいている。「現代版ジャズロック」を掲げ、4年間で8枚と驚異的なペースでアルバムを発表。チャートの上位にも食い込み、ジャンルや世代の枠を超えて支持が広がる。
2011年、それぞれ別のJ-POP、ロック系のバンドに所属していた岸本亮、カワイヒデヒロ、井上司の3人が「今のバンドとは違う音楽をやりたい」と結成した。目指したのは、1970年代に流行したジャズロックにポップな旋律やメロディーを加えた音楽だ。
しかし、J-POPの世界でもボーカルが入らない「インストゥルメンタルバンド」はすでに数多く存在する。そこで、プロデュースを担当したディスクユニオンの谷口慶介氏は「J-POP」ではなく、「ジャズ」で売り出す戦略を取った。「彼らの音楽はジャズ界にはない新路線。バンドを売り込む余地が大きいと思った」と話す。
谷口氏はフォックスなど新進グループのための新レーベル「Playwright(プレイライト)」を12年に設立。本来なら「商売敵」にあたるタワーレコードにも売り込んだ。すると、全国屈指の発信力を持つタワレコ新宿店が注目する。同年に出したタワレコ限定のミニアルバム「FLEXIBLE」はジャズコーナーの目立つ場所に置かれ、徐々に評判を呼んだ。13年に全国デビューアルバム「trinity」を発表、その後は年に2、3枚の割合で話題作をリリースしている。昨年の「BUTTERFLY」はオリコンのデイリーランキングで最高17位に入った。
従来のジャズロックとは異なる、疾走感あふれるビートと口ずさみたくなる印象的な旋律。アンダーワールドやビョークなど洋楽の名曲も大胆にカバーし、様々なジャンルのファンにアピールする。今年は初めてヴォーカルにKeishi Tanakaを迎えた「透明色のクルージング」も発表した。戦略的に打ち出してきたイメージは、デビューから4年で定着した。今後は、本格的なジャズへの案内役という役割も担うことになりそうだ。
(岩)
[日本経済新聞夕刊2016年9月7日付]
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