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木の香漂う我が家 壁や床材、むく材で改修

2016/9/7付 日本経済新聞 夕刊

 都会にいながら自然を感じ、リラックスできる空間に住んでみたい。そうした希望をかなえる方法の一つが無垢(むく)材を使ったリフォームだ。家族の歴史を刻みながら時の経過とともに色合いが変わっていくのも木ならではの魅力だ。

エアコンにも木製のカバーをつけると統一感のある部屋にすることができる(東京都府中市の西川さん宅)

 「木の香りをかぐと家に帰ってきた感じがしてホッとする」。東京都府中市に夫と暮らす西川いずみさん(66)は、築20年の戸建て住宅の床を北海道産のクリの無垢材で、作り付けの収納スペースや壁の一部は山形県産の金山杉でリフォームした。以前は床は合板のフローリングで、壁材はビニールクロスを使っていた。

 当初、木は「手入れが大変そう」と不安もあったが、実際に暮らしてみると「特に負担にはならない」。24平方メートルのリビングの床の手入れは年2回20~30分程度のワックスがけのみ。むしろ木は静電気が抑えられ「ほこりがたまりにくい」。

 室内には机から食器棚、ベッドまで国産杉で作った家具が並ぶ。エアコンも同じ素材で覆った。木は加工がしやすく高さや幅を自由に調整できるため、食器棚と天井の隙間は30センチメートルあったが、今では隙間を抑えてぴったり。大地震でも「棚が倒れてこないので安心」という。

 国産材などの自然素材を扱う住宅建設・リフォーム専門の木の家づくりネットワーク(東京・世田谷)が設計した。代表の山中文彦さんは「2015年に手掛けたリフォームは約10件。着実に増えている」と話す。

 インターネットで無垢材について容易に調べられるようになり、木を使ったリフォームに興味を持つ人も増えている。落ち着いた香りやサラサラとした肌触り、時間の経過とともに味わいが深まる点などが無垢材の魅力だ。主な客層は50代以上の夫婦だが、最近は30代の関心も高い。6畳間の床のリフォーム費用は13万~15万円ほどだ。

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 千葉県浦安市の戸建て住宅に家族4人で暮らす二塚恭子さん(46)は、床や階段を木でリフォームした際に、車のガレージとベランダも木で作った。丈夫なウォールナット床のリビングからは、ガレージに止めた車好きの夫の昌彦さん(48)の愛車が見える。ガレージも柱や天井などの骨組みに木を使った。全体を木で統一したことで、「屋外までリビングが広がっているように感じる」(恭子さん)。

 設計は自然素材を使ったリフォームに強い木巧舎(千葉県市川市)。ベランダとガレージにかかった費用は400万円ほどだ。「外気にさらされ続けることを考えて、イペと呼ばれる頑丈で雨に強い木材を使った」(桜井功一代表取締役)

 木のリフォームは戸建て住宅だけに限らない。川崎市のマンションに住む40代の播口智也さんは、合板のフローリングを吉野杉の無垢材に、壁をビニールクロスから珪藻(けいそう)土にした。新たに作ったリビングの柱にも吉野杉を使った。

 キッチンをリフォームしようと訪れた住宅展示場で、無垢材の床の肌触りや香りを知り、玄関の一部を除く全部屋をリフォームすることに決めた。間取りを変更するため壁を取り払い、キッチンや風呂場など水回りもすべて新しくした。

 播口さんも「木は手入れが大変では?」と思っていたが、実際はワックスを年1回ほど塗るだけでよかったという。よく人が歩く廊下の床には艶も出てくる。杉は柔らかいので「多少のへこみならスチームアイロンで元に戻る」。無垢材ならではの効果だ。もっとも「木なら物を落としたりぶつけたりしても味になるので気にならない」。中学1年生の娘さんも「梅雨時やお風呂上がりでも床がべたつかない」と満足げだ。

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マンションでも木を使ったリフォームは可能だ(川崎市の播口さん宅)

 リビングには床を30センチメートルほど底上げした畳敷きスペースを作り、その下に物を収納できるようにした。戸建ての縁側のように座ることもできる。「くつろげる空間ができて、家族が自然とリビングに集まるようになった」(播口さん)

 中古マンション専門のリフォーム会社、マスタープラン(兵庫県西宮市)が設計した。小谷和也代表取締役は「マンションでも無垢材が使えることをネットで知る人が増えた」と話す。

 キッチンだけでなく、壁をすべて取り払い、水回りもすべて新しい設備に交換し、床もすべて無垢材に張り替えた。木製の家具や作り付け棚なども含め、かかった費用は「1400万円ほど」(播口さん)。当初の見込みより高額になったというが、大規模に改装したからこそ「これだけ木に囲まれた雰囲気のある空間ができた」と満足げだ。

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■見学申し込みも
 無垢材は、木の種類、木目や節の有無、部材の厚さなどで、価格帯が大きく異なる。木の香りや肌触りも実際に手にしてみないとわからない。リフォーム会社に見学を申し込んだり、施工事例を紹介してもらったりして確認しておきたい。

(商品部 伊地知将史)

[日本経済新聞夕刊2016年9月7日付]

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