『シン・ゴジラ』評判の理由 組織で働く悲哀に共感

大ヒットになった映画「シン・ゴジラ」(C)2016 TOHO CO.,LTD
大ヒットになった映画「シン・ゴジラ」(C)2016 TOHO CO.,LTD

映画「シン・ゴジラ」が大ヒットしている。公開から1カ月で動員360万人、興行収入53億円を突破し、今年の実写邦画第1位に躍り出た。この人気は庵野秀明総監督が作ったアニメ「エヴァンゲリオン」ファンが、ゴジラに共通点を見いだして盛り上げたことが大きいといわれる。

海外100を超える国での配給が決まり、流行である「応援上映」(映画を見ながら叫んだりペンライトを振ったりする)が開かれたり、ゴジラとゆかりの深い日劇での上映が始まったりとお祭り騒ぎ状態だ。

若い人に人気の「シン・ゴジラ」だが、本当は組織で働く悲哀とやりがいを知る中年に向けられた映画なのだ。3つの理由を説明しよう。

(1)組織の論理が分かる この映画は怪獣映画ではない。経験したこともない出来事に遭遇したとき政府はどう対応するかを描いた「災害シミュレーション映画」だ。対策室の設置、コピー機を多数並べる、上司にメモを入れる様子、「聞いてないぞ」と怒鳴りながら言質を取られないようにする幹部など、どれも大きな組織で働いている人間ならば笑いがこみ上げるほどうまく描けている。分かっていながらどうにもならない縦割り組織や前例主義の弊害は、経験を積んできた大人だからこそ共感できる。綿密な取材に基づいた演出は自分のこととして迫って来る。

(2)愛のドラマは不要 「会議のシーンばかりで人間が描かれていない」という批判は多い。だが、「恋愛や家族愛は見るものではなくするものだ」(50代男性)。映画で描かれているのは徹底して、組織の中の人間、突出した個人は出てこない。関係は希薄なようでも、一旦目標さえ決まれば己を捨てて力を合わせる。この気持ちよさは組織人だからこそ理解できる。

(3)男の子が好きな物が満載 映画には子供の頃に一度は夢中になったものが詰まっている。戦車や戦闘機、特殊車両や鉄道、ジオラマ、そして謎の生物。夢中になり集めた日々の記憶が徐々によみがえる。あのワクワクは男子ならではのものだ。

もはや「良くできた」というレベルではない。司馬遼太郎を読む気持ちで見てほしい大人向けの映画だ。

(日経BPヒット総研 上席研究員)

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