猿の見る夢 桐野夏生著定年前の男を突き落とす

(講談社・1700円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

主人公は、定年前の会社役員。愛人を確保し、資産も欲望も老後の見通しも人並み以上にリッチ。だが、それらの維持にともなう苦労も人並み以上。「勝ち組」にしてはグチが多い。

初老の思春期を謳歌する男。その不安定な日常がおかしな夢占い師の出現から、崩れだす。破滅に突き落とす徹底ぶりこそ桐野節の凄(すご)みだ。「怖いものみたさ」で読みすすめる。

主人公の境遇が「平均的」かどうかはさておき「こんな男はどこにでもいる」。優柔不断の小心なエゴイスト。身につまされる共通体験の1つや2つは必ず見つかるだろう。それを女性作家によって暴きだされたことが、本作の底深い恐怖なのだ。続編を暗示するような不穏な結末も薄気味悪い。

★★★★

(評論家 野崎六助)

[日本経済新聞夕刊2016年9月1日付]

★★★★★ 傑作
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…

猿の見る夢

著者 : 桐野 夏生
出版 : 講談社
価格 : 1,836円 (税込み)

エンタメ!連載記事一覧
注目記事
エンタメ!連載記事一覧