コーヒー、北欧の空間術で楽しむ 家具と照明で演出

第3次コーヒーブームといわれ、様々なスタイルでコーヒーが楽しまれている。意外なことに1人当たりのコーヒー消費量はフィンランドなど北欧諸国が上位を占める。落ち着いた北欧家具に囲まれ夜の長い国ならではの上手な照明の使い方が、自宅でコーヒーに親しむ文化を育んでいる。今年の秋の夜長、北欧流を参考にしてはいかが。

コーヒータイムやコーヒーブレークといった習慣は世界的にごく日常のものになっているが、国によって楽しみ方にそれぞれ特徴がある。国民1人当たりの消費量が世界トップクラスといわれるフィンランドをはじめ、ノルウェー、スウェーデンは他国と比べても1日に飲む量が多い。北欧の人たちのコーヒーへの深い愛情がある。

友人、家族、恋人との「お茶時間」を彩る北欧のコーヒーセット

特にスウェーデンにはフィーカ(Fika)という生活習慣があり、暮らしに深く根付いている。昼は職場仲間や友人と、夜は恋人や家族とコーヒーを飲みながら休憩をとるものだ。いわゆる「お茶時間」だが、このブレークにはシナモンロールやビスケット、クッキーといった焼き菓子や果物が添えられることが暗黙のルールになっている。スウェーデン生まれの知人によると1日に4~5回もフィーカを取り、日常の何気ない会話を楽しむという。

この北欧のコーヒー文化に大きく関わっているのが、照明を含めた北欧の家具・インテリア、食器などだ。

北欧家具のデザインの特徴は、あくまで日用品として使いやすく飽きがこないシンプルな点にある。家具の多くはファブリックや木という自然素材で構成され、オイルやソープ仕上げ(せっけん水で被膜を作る仕上げ)を施された手触りの良いものが多い。北の国ゆえ室内で過ごす時間が長いため、静かにくつろぐことに役立っている。また、花瓶や飾り皿などインテリアは、室内を明るくするため赤や青、黄など原色を使ったものや、花や木、鳥など自然をあしらったものが多い。日照時間の短い室内に、明るさを取り込む工夫だ。

北欧の人々は、自宅で親しい人たちとコーヒーをゆったり楽しむ舞台装置として、こうした家具とインテリアの使い方がとてもうまい。飾り棚に小物類を配置する際には、テーブルに座ってコーヒーカップを手にした時の視点と同じ高さのところに、こだわりの品や家族が思い入れのある物を集める。こうした落ち着いた家具と小物類に囲まれる空間づくりが、フィーカに代表される北欧コーヒー文化をより芳醇(ほうじゅん)なものに仕立てていった。その他、お湯を入れるコーヒーポットなど専用の小物があるといい。コーヒーを入れる過程そのものを楽しもうという発想だ。

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複数の照明を使って陰影をつくりだすことで、奥行きのあるスペースを演出する(東京都新宿区のリビングデザインセンターOZONE)

もう一つ重要な要素を担うのが「照明」だ。長い冬に閉ざされる生活を余儀なくされる北欧の人たちにとって「明かり」は特別なものだ。例えば、一室で何灯もの照明を使う「多灯式」を取り入れている。多灯式であれば影が幾十にも重なり奥行きを生み出す。天井灯だけで済まそうとすると、すべてが平面的な空間になってしまう。

北欧の人々の住まい方を見れば一目でわかるが、テーブルの上方には低めにつるされたペンダントライトがあり、サイドテーブルにはデスクランプ、またフロアランプを使って陰影を生み出し、奥行きが出るようにしている。これにキャンドルライトの灯(ともしび)が加われば、人の眼に優しい、深みのある空間のできあがりである。

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こうした照明の演出によってリラックスできる状態を生み出している。テーブル上のコーヒーポットやカップのそれぞれに幾つもの陰影がつくことで、一つ一つの存在感が増してくる。コーヒーの透きとおるような琥珀(こはく)色や、器の美しさが引き立ち、コーヒーブレークの時間をより味わい深くすることを、無意識のうちに北欧の人たちは知っているのだろう。

多灯式であれば、間接照明も容易にできる。デスクランプなどサブの照明を使って壁を照らすことで、光源が直接目に入らず、気持ちが静かになる。また、スポットライトのように、飾り棚などにあるお気に入りの小物類を照らせば、目が自然に向かいやすくなり、くつろぐ効果を引き立てる。

このように十分にリラックスできる場所で親しい人とコーヒーで特別の時間を持てることは、現代人にとって最高のぜいたくの一つではないだろうか。北欧のコーヒーの楽しみ方は、もちろん紅茶や、日本茶にも応用できるものだ。

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■価格高めだが長く使える
 国内で販売されている北欧の家具やインテリアは、日本製の同クラスの商品に比べ、1~2割高いものが多い。ただ、モデルチェンジが少なく長く使えることを考えれば十分見合う。北欧家具専門店のほか、大手家具チェーンで入手できる。

(リビングデザインセンター OZONE 森口 潔)

[日本経済新聞夕刊2016年8月31日付]