東京五輪エンブレム「組六紋」で上田ブランド化推進

上田プロジェクトの商品を並べた屋台を常設するかんてんぱぱショップ小布施店(長野県小布施町)
上田プロジェクトの商品を並べた屋台を常設するかんてんぱぱショップ小布施店(長野県小布施町)

上田商工会議所(長野県上田市)の青年部有志が上田市をブランド化しようと始めた「上田プロジェクト(UP)」が大きく前進している。特産品パッケージなどに使う統一デザイン「組六紋」が昨秋完成。制作したデザイナーの野老朝雄氏の作品が2020年東京五輪・パラリンピックの公式エンブレムに採用されたことで組六紋の注目度も一気に高まり、商品へのデザイン活用が広がっている。メンバーは市などにも協力を呼びかけ一層の普及を目指す。

上田プロジェクトはリーダーである藤本つむぎ工房(上田市)の佐藤元政営業部長、事務局長の協和食品(同)の宮下修社長ら5人を中心に、3年前から新商品開発や販路開拓の勉強会を開催。ブランド統一の重要性に行き着き、昨夏に野老氏にデザイン制作を依頼した。野老氏が10月に上田を訪問してメンバーと話し合い、11月に4種類の基本形を完成させた。

野老氏が六文銭を基にデザインした上田プロジェクトの「組六紋」

組六紋は上田ゆかりの真田氏の家紋「六文銭」を基に、一文銭に筋を入れてデザインしたもの。組み合わせで富の象徴である米俵やぶどうの房に見える。基本形は単色だが、カラー化など自由な展開が可能。野老氏が五輪向けにデザインした「組市松紋」とは制作時期も近く姉妹のような存在だ。プロジェクトの略称や上田市の読み(上だ)をもじった[UP↑]を組六紋と合わせて使う。

幸運が訪れたのは4月25日。野老氏のデザインが五輪公式エンブレムに選ばれ、組六紋への関心も急上昇した。想定外の追い風を受けてデザインは様々な商品に活用されている。

メンバー内では藤本が上田産繭を使った化粧用商品「玉繭コスメ」、箱山食糧販売店(上田市)が「りんご米」などブランド米の包装に使用。飯島商店(同)のみすゞ飴(あめ)、八幡屋礒五郎(長野市)の上田限定のスパイスなど地元の著名商品にも使われ始めた。

東京五輪・パラリンピックのエンブレム

精密板金の沓掛工業(上田市)は[UP↑]のデザインを使った統一ブランド商品専用の販売屋台を製作。プロジェクトに共感した寒天メーカー伊那食品工業が4月28日、小布施町にある自社製品や地元伝統工芸品などを扱う店舗にこの屋台を設けた。東京の東急ハンズ新宿店でも6月21日から1カ月間、屋台を置くなど催事や祭りでの販売も始まった。

上田市内の別所温泉街でも7月下旬にプロジェクト商品の販売を開始した。「オール上田の下地ができつつある。今後は品数や賛同企業、売り場を増やすのが目標」と宮下氏。「商品を売るだけでなく、様々な異業種とつながって上田を全国にアピールしたい」と抱負を語る。

一層の普及には上田市や商工会議所の協力が不可欠だ。野老氏が7月に母袋創一市長を表敬訪問した際、同行したメンバーが支援を要請した。母袋市長は「すばらしいデザインなので上田のイメージづくりに使えればと個人的に思う。どのように使えるか話し合っていければ」と話している。

上田市で7月1日に開かれた日本デザイン学会の研究発表大会で基調講演した野老朝雄氏は、上田プロジェクトについて熱意を込めて語った。

「真田氏の六文銭は子どもの脳裏にも焼き付く形の持つ強さがある」という野老氏。「六文銭を今の時代の紋にできないか考えた。組六紋は筋を入れることで輝きとつながりを表現。六文銭と同じように100年、200年もつものができるといい」と期待を込めた。

組六紋をベースにしたカラー化などのアレンジは他のデザイナーができるようにし、使用する際には野老氏に1件ずつ確認を取る。「さらに普及させるには権利関係を明確にした利用のガイドラインを作り、審査機関も必要になる」と宮下氏はみる。

野老氏は自らの制作に携わる姿勢を「いかに事象を他人事でなく自分事にできるか」と語る。

組六紋の成長も、まさに地元がいかに積極的に関わっていくかにかかっている。

(宮内禎一)