専門家が試食 エスニックカレーで暑さ吹き飛ばせ
レトルトでも香ばしさ再現
厳しい残暑で夏バテ気味。そんな日はスパイシーなカレーで食欲を刺激してはいかがだろう。近年はスパイスやハーブの風味豊かなエスニックカレーのレトルト商品が増えている。メーカーのお薦めを専門家が試食し、評価した。
1位はグリーンカレー。タイ料理好きも満足できる辛さに、ココナツミルクのまろやかさが加わり、初心者も食べやすい。インド系もバターチキンを中心に食べやすいタイプが並んだ。
ハーブやスパイスは長時間高熱にさらすと風味が飛びやすく、レトルトで香ばしさを再現するのは難しかったが、最近は技術が進歩。井上スパイス工業(埼玉県上尾市)の井上和人会長は「レトルトで完成度の高いカレーを味わえるようになった」と話す。
エスニックカレーの商品が充実した背景には「タイやインド料理の店が増え、目新しいものが受け入れられやすくなった」(カレー総合研究所=東京・渋谷=の井上岳久さん)ことがある。インディカ米やサフランライス、ナンなども試して、いつもと違う食卓を演出してみよう。
現地の素材ふんだん、香り豊か
唐辛子やハーブをすり潰してペースト状にしたものをココナツミルクで煮込んだ、タイの代表的な辛いカレー。「タイと日本の食の架け橋」を自認する同社がタイの自社工場で作った。現地でのみ入手できる新鮮な緑唐辛子やこぶみかんの葉、バジル、パクチー、レモングラスなどハーブをふんだんに使い「レトルトとは思えない豊かな香りが広がる」(池上正子さん)。チキンのほか、タイナスやスズメナスなどタイ産の野菜にもこだわり、具材が充実。「バンコクの屋台で食べたカレーを思い起こす」(飯塚敦さん)という本格派だ。スープカレーのようにさらさらしているので、ルーとライスは別に盛りつけよう。「そうめんに付けて食べるのもおすすめ」(鈴木佳代子さん)。
(1)356円(2)180グラム(3)http://yamamori-shop.jp
じっくり煮込んだうまみ、抜群の辛さ
パネンカレーはタイ南部で生まれたカレーで、ハーブの風味を生かすグリーンカレーと違ってじっくり煮込んで作るのが特徴。コリアンダーシードやクミンパウダーなどのスパイスとココナツミルク、チキンを使ったコクのあるスパイシーな一品だ。タイ食品メーカーの人気商品を輸入しており、「圧倒的な本場感を味わえる」(斉藤賢太郎さん)。とても辛いので、タイ料理に慣れた人に向いている。内容量は他の商品に比べて少ないが、辛さを考えるとちょうど良い。
(1)270円(2)115グラム(3)http://doverfield.co.jp/scb/shop
インド料理店「マンダラ」の味再現
「噂の名店」シリーズの中でも人気の商品。カレー激戦区、東京・神田のインド料理店「マンダラ」のカレーを再現した。バターチキンカレーは北インドの定番で、スパイス、完熟トマトの酸味、濃厚バターのコクがバランス良く、口当たりが優しい。「他のバターチキンに比べトマトの酸味が際立っていて、女性が好みそう」(名久井梨香さん)。スパイスがそれほど強くないのでインドカレー初心者に向いている。
(1)339円(2)200グラム(3)http://www.sbotodoke.com
コクのある甘み、鶏肉など具材と一体
西友のプライベートブランド(PB)商品の中でも一番人気。マッサマンとはタイ南部のカレーで、ドライスパイスとナッツ、ココナツミルクでコトコト煮込んだ。鶏肉やジャガイモなど具材と一緒に、コクのある甘みを味わえる。「もっとハーブやスパイスの香りがあっても良いが、マッサマンとして成立している」(アッタポル・タントン・ナイトウさん)。辛いのが苦手な人でも楽しめる。
(1)162円(2)180グラム(3)https://www.the-seiyu.com
スパイス数十種類、辛み残し甘すぎず
創業1980年の東京・渋谷にあるインド料理店「サムラート」で出すバターチキンカレーを家でも味わえる。インド人のシェフが現地で手に入れた数十種類のスパイスを独自の方法でブレンドした。「色が明るく美しい。辛みを残し、甘すぎないバターチキンに仕上がっているのが良い」(渡辺玲さん)。3位に比べると辛い。
(1)540円(2)200グラム(3)http://www.rakuten.co.jp/samratonlinestore
22日に新発売。大きな鶏手羽元2本をショウガやニンニクなどの調味料に漬け込んでから柔らかく煮込んだ。「鶏肉の香ばしいダシが良く出ている。肉が丸ごと入っているのも迫力がある」(姉川理紀さん)。東京・上野の有名店「デリー」が監修した。
(1)486円(2)260グラム(3)電話0120・50・1231
インドの伝統料理。多種類のスパイスで煮込んだひよこ豆はほっくり。「つまみとしても成立する」(斉藤さん)
(1)367円(2)200グラム(3)http://ambikajapan.com
バターを煮詰めてコクと香りを凝縮したバターオイル「ギー」を使用。トマトやカシューナッツのコクが加わりマイルドに。
(1)380円(2)180グラム(3)http://www.muji.net/store
イオンのPB商品。「肉の切り方や量が程よく、バター風味が残るちょうど良い辛さ」(香取薫さん)
(1)321円(2)180グラム(3)https://www.aeonnetshop.com
東京・神田の「エチオピア」の看板メニューをレトルトに。「シャープな辛さ。スパイスのバランスが良い」(井上和人さん)。
(1)390円(2)200グラム(3)http://www.mcc-tuhan.jp
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表の見方 数字は選者の評価を点数化。商品名、販売・製造者(1)主な購入先での税込み価格(通販は送料別の場合も)(2)1袋当たりの内容量(3)通販サイトのURL(6位は問い合わせ先)。パッケージ写真は各社提供。
調査の方法 主なメーカー22社にスパイスやハーブの香りが豊かなエスニック系のレトルトカレーのおすすめを1商品挙げてもらい、専門家11人が商品名を伏せ白米にかけた状態で試食。「完成度」や「食べやすさ」を軸に評価した。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。
アッタポル・タントン・ナイトウ(シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルグランカフェシェフ)▽姉川理紀(紀ノ国屋営業本部商品部主任)▽飯塚敦(カレーライター)▽池上正子(料理研究家)▽井上和人(井上スパイス工業会長)▽井上岳久(カレー総合研究所代表)▽香取薫(インド料理研究家)▽斉藤賢太郎(dancyu編集部)▽鈴木佳代子(タイ料理研究家)▽名久井梨香(フリーライター)▽渡辺玲(インド料理研究家)
[日経プラスワン2016年8月20日付]
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