賃貸住宅、DIYで改装 原状回復不要な物件続々

自分好みに壁紙を貼り替えたり、床を畳からフローリングに変えたりしたい。賃貸でもそんな願いをかなえられる物件が登場している。原状回復の必要がない物件や改装期間中は無償で貸与してもらえる物件も多い。ものづくりに興味がある人はもちろん、DIY(日曜大工)の経験が無い人からの注目も高まっている。

建築士の谷章生さん(34)は都市再生機構(UR)が供給するフレール西経堂(東京・世田谷)の「DIY住宅」に住む。床を畳からフローリングに張り替えたり、間仕切りを撤去したりして室内を全面改装した。

工事は3カ月。友人15人の協力も得た。費用は90万円ほど。木材には環境の保全に配慮した国際認証の「FSC認証材」を使った。「工事が終わった後も、気になったところに手を加えられることが魅力」と話す。

和室を洋室にDIYで改装したURのモデルルーム(東京都板橋区)

URは入居者が壁紙を貼り替えたり、作り置き家具を設置したりできる「DIY住宅」を提供している。壁や床、キッチン設備など範囲は幅広く、全国37団地の225戸に導入している。工事期間として3カ月間、無償貸与する。入居者は事前にどのような工事を施すのかを申請する必要があるが、原則として退去時の原状回復は不要だ。

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URは入居者に手引きを配布し、DIY可能な範囲を示している。躯体(くたい、コンクリート部分)を削ったり、撤去したりすることはできないが、壁や天井を好みの素材や色に替えたり、ふすまやかもいを撤去して2部屋を1部屋にしたりすることは可能だ。浴槽の取り換えもできる。壁の塗装などに可能範囲を限定した住戸もあり、19団地75戸に導入している。

東京都板橋区の高島平団地では4戸のDIY住宅を供給している。1LDKや2DKの約50平方メートルの部屋で、家賃は周辺相場並みの平均8万円前後。20~30代に人気だという。DIYに興味はあるが方法が分からない人を対象に、壁紙の貼り替え方などを教えるワークショップも定期開催している。

押し入れを壊し、バーカウンターを設置した(東京都八王子市)

会社員の島田詠己さん(33)は今春、JR八王子駅から徒歩20分ほどのところにあるエスエストラスト(東京都八王子市)のDIY物件に入居した。工事は友人と5カ月かけて行った。費用は約20万円。趣味のキャンプが高じて床を芝生に張り替えた。押し入れを壊し、バーカウンターも作った。漫画や本が好きで、すぐに部屋にあふれてしまうのが悩みだが「増えたらまた棚を作ればいい」と笑う。

エスエストラストは「DIY不動産」という名称で、原状回復が不要な賃貸物件を2年前から提供し始めた。現在は八王子市中心に17件。居住者は20~30代男性が多く、セカンドハウスとして使う人もいるという。

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同社の広報担当者は「DIY物件は入居後も居住者との関係が続き、退去防止につながる」と話す。賃貸物件は同じようなつくりのものが多いが、少し手を加えるだけで印象ががらりと変わるのも魅力の一つだ。DIYの結果、物件の価値が向上することもあるという。

まちづクリエイティブ(千葉県松戸市)はJR松戸駅周辺でDIY物件を展開している。現在は70部屋で、ほぼ満室の状態だ。入居者は30代が多く、6割がものづくりに興味がある人だという。工事前に内容の申告は必要だが、基本的に自由に改装でき、原状回復の必要もない。工事期間の家賃も免除する。

壁を取り除き、床を畳からフローリングにした(千葉県松戸市)

松戸駅から徒歩15分のところにある同社のDIY物件に5月に入居したデザイナーの木村貴秀さん(32)の部屋は、よく旅行するフィリピンなどの東南アジアがモチーフだ。全くの素人だが、動画配信サイトを見てDIYを学んだという。フローリングをはがして土間を作ったり、壁を取り壊して2部屋を1部屋にしたりした。工事には2カ月半かかったが、費用は10万円を下回ったという。

同社のDIY物件には、入居者が自由に使える共有スペースがある。工具や木材があり、入居者同士で工具を貸し借りしたり、余った木材などを融通したりもできる。木村さんも「もらいもので工事したので、ほとんどお金はかからなかった」と振り返る。

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■政府、実例など示す
物件情報はインターネット上などで探せる。退去時の原状回復義務については事前の確認が重要だ。政府も空き家対策として個人住宅の賃貸流通の指針を作成。その中でDIYの実例などを示している。

(商品部 金尾久志)

[日本経済新聞夕刊2016年8月10日付]

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