翻訳家として名高い著者によるエッセイ集。こう書くと、仕事上のあれこれを書いているように思われるかもしれないが、まったくそうではない。自由で、該博な知識に裏打ちされた思考の足跡が描き出されている。
きっかけは、ケープタウン。著者が訳したJ・M・クッツェーが暮らした南アフリカの都市。そこで、あるワイナリーに立ち寄る。「ワイン」と「コンスタンシア」という2つの語に導かれるように、フランスの19世紀の大詩人ボードレールの詩句が脳裡(のうり)によみがえる。
ボードレールが生涯愛した褐色の恋人ジャンヌ・デュヴァル。彼女のルーツを経めぐる思考の旅は、カリブ海へと及ぶ。「黒い女たちの影」を追い求める、達意の文章。
★★★★★
(批評家 陣野俊史)
[日本経済新聞夕刊2016年8月4日付]
★★★★★ 傑作
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…