商談の手みやげ作法 いつ・何を・どう贈る?個包装で日持ちする品を 予算は2000~5000円

2016/8/4

暮らしの知恵

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仕事上、初めて相手先を訪問する時や、商談の区切りの会食時、双方の関係を円滑にするため「手みやげ」が役立つことがある。だが、何を持参し、どう贈るべきかわからない人も多い。手みやげ選びのポイント、渡すタイミング、マナーについて聞いた。

先輩から受け継いだ得意先を訪問するにあたり、手みやげを持っていこうと思いついた入社3年目のA子さん。時間がなかったので、相手の会社の最寄り駅の前にあった洋菓子店に飛び込んだ。目についたクッキーを包んでもらったが、渡す作法やタイミングを心得ているわけでもない。「買うんじゃなかった」

そんな若いA子さんたちに、「100億円を引きよせる手みやげ」の著者で、クライアントサイド・コンサルティング(東京・千代田)社長の越石一彦さんは「手みやげは心と心をつなぐ接着剤だ」と説く。「手みやげで物事が決まるほどビジネスは甘くない。しかし上手に贈ればいい仕事につながる」。場がなごむばかりではない。「猛暑ですがご自愛ください」という言葉より、手みやげの梅干しの方が、相手の心に響くこともあるのだ。

どのような品がふさわしいのだろう。ぐるなびの秘書コミュニティサイト「こちら秘書室」でファシリテーターを務める渡辺華織さんは「先方の好みがわからない場合、洋菓子などが無難。個包装で日持ちがするものを選ぶとよい」とアドバイスする。あらかじめ先方が甘いものが苦手とわかっている場合は、チーズや抹茶などの風味や、スパイス入りの菓子などを入れてもいい。事務所を訪問する際には、事前に働いている人の人数を把握しておくと、分量を間違えないで済むだろう。

越石さんは相手方の家族への配慮もすすめる。「失礼のない範囲で、好き嫌いや家族構成などを聞いておくといい。孫と同居しているなら、子ども向けの菓子を用意すると喜ばれる」

昼時や小腹のすく時間帯の訪問なら、カツサンドやのり巻きなど、ちょっとつまめるものもおすすめだ。一緒に食べると互いの距離が縮まる、と越石さん。「相手の新幹線出張前に、移動中に召し上がってくださいと、いなりずしを持っていったこともある」

普段から手みやげを探す努力も大切だ。例えば気になる老舗の商品を買って食べてみる。作り手のこだわりや店の歴史も聞いておくと、手渡すときエピソードを語れる。

日本サービスマナー協会(東京・中央)の認定講師、森良子さんによれば、予算は2000~5000円くらいが適当。相手が受け取ることに負担を感じないようにする。営業現場で若い人が持参する場合、高価な品は必要ない。「個人負担の場合は1回1000円、月3回までなどと限度を決めると続けやすい」(越石さん)。少ない負担で相手に自分を印象付けよう。

どんなタイミングで手渡せばよいのか? 森さんは「訪問先の会議室や応接室に通され、挨拶を終えた時が良い。初対面なら名刺交換の後がベスト」と話す。紙袋は本来ほこりよけなので、商品を取り出し、箱や包装紙の正面を相手に向けるようにする。両手を添え、胸の位置で持つとていねいだが「ルールに縛られるより、相手が受け取りやすい渡し方を心がける」。

商談成立後などの区切りの会食時に渡す手みやげは、ハムや紅茶など朝食に家族で楽しめるものを選ぶのも一手。電車で帰る相手には重いもの、かさばるものは避ける。渡すタイミングは見送り時がよい。会食の場合は紙袋に入れた品を「紙袋のままで失礼いたします」と言って差し出す。ただし自分が持ち歩いた袋ではなく、新品を用意し、入れ替えて渡す。手みやげに一言、言葉を添える場合「つまらないものですが」は避ける。「お口に合うとよろしいのですが」「心ばかりのものですが」の方が印象が良い。

相手先が複数いる場合は、一番目上の人に手渡すようにする。会食は改まった場なので、どの参加者が一番上の立場になるのか、相手の名刺をよく確認しておくことが必要だ。贈る側も、一番立場が上の人から渡すようにする。

(ライター 西川 敦子)

[日本経済新聞夕刊2016年8月1日付]

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