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虫刺され、ハチやマダニを甘く見ない 対処と予防法は 服は明るい色、肌の露出少なく

2016/7/21付 日本経済新聞 夕刊

 ハチやマダニなど、刺されたりかまれたりして腫れや痛みを引き起こす虫は多い。激しいアレルギー反応や病原体の媒介で命を脅かす種類もいる。野山などに出掛けることが多い夏休みシーズン間近。楽しいレジャーが暗転しないよう、対処法と刺されないための予防法を知っておきたい。

 昨年9月、北海道士幌町で草刈りをしていた男性(37)がスズメバチに手を刺され亡くなった。1カ月前にも刺されており、体内にハチ毒への抗体ができ重いアレルギー症状が起きる「アナフィラキシーショック」を起こしたとみられる。

■ハチ、夏は攻撃的

 厚生労働省の人口動態調査によると、ハチに刺され死亡したのは2014年に全国で14人。1984年の73人をピークに減少傾向にあるが、おおむね年間20~30人台で推移している。

 独協医科大学病院の平田博国講師(呼吸器・アレルギー内科)によると死亡者は農林業や建設業の高齢男性が目立つ。こうした人は以前ハチに刺され、抗体を持っている場合が多い。平田氏は「アレルギー反応を抑えるアドレナリン自己注射薬(エピペン)キットを携行すると安心」と話す。

 刺されたら安全な場所に移動し、静かにしゃがんで30分~1時間様子をみる。針が残っていても抜かず、医療機関を受診すべきだという。痛みは初回なら冷水などで冷やせば1~2時間で消える。「息苦しさや手の震え、吐き気などのアレルギー症状が出たら事は一刻を争う。エピペンを持っていたらすぐに打って受診、なければ救急車を呼んでほしい」(平田氏)

 ハチは巣を拡大し個体も増える8~9月は攻撃性が高まる。兵庫医科大学の夏秋優准教授(皮膚科)によると、刺されないためには(1)近づいてきたらゆっくり後ずさりして距離を開ける(2)手で追い払うなど刺激しない(3)白など明るい色の服や帽子をかぶる(4)化粧品などは無香料のものを使う――といい。

 肌に食いついて吸血するマダニにも注意したい。皮膚から血を吸う際に細菌やウイルスなどがうつり、日本紅斑熱やライム病といった感染症を引き起こす。日本紅斑熱は2~8日後に頭痛や高熱、発疹が起きる。患者は増加傾向で、昨年は212人だった。

■マダニで死亡例も

 中国で発見され、13年に日本でも確認された重症熱性血小板減少症候群(SFTS)も媒介する。全国で年間40~60件発生。重症化すれば死に至るリスクがある。下血などの症状もあり、体液に触れるなどして人から人に感染することもある。国立感染症研究所によると、16年6月末までに計47人が死亡した。

 84年に日本紅斑熱を発見した馬原医院(徳島県阿南市)の馬原文彦院長はマダニについて「かまれる前なら払うだけで落ちるが、かまれたら無理に引っ張ると皮膚内に口器が残って化膿(かのう)することがある」と話す。ワセリンをたっぷり塗ったり、テープやばんそうこうをぴったり貼ったりして窒息させる方法が効果的という。それでも剥がれ落ちなければ医療機関で取ってもらう。

 すがすがしい夏の野山。見た目は小さくても、決して侮れない虫が潜んでいることを頭の片隅にとどめたい。

◇     ◇

■蚊の防除活動 各地で

 デング熱やマラリア、ジカ熱など蚊が媒介する感染症は多く、各地で防除活動が広がる。

横浜市泉区の緑園2丁目自治会は住民ぐるみで防除活動をしている

 デング熱は2014年夏、国内で70年ぶりに感染が確認された。ジカ熱同様、国内でも広く生息するヒトスジシマカなどが媒介する。海外でウイルスを持った蚊に刺され、帰国後も国内で刺されると二次感染の恐れが生じる。

 埼玉県は今月上旬、こうした感染症が発生した場合に備え、蚊の防除訓練を実施。県内2カ所の公園で、市町村の職員らが集まって殺虫剤の散布手順などを確認した。

 横浜市泉区の緑園2丁目自治会は05年から、夏場に月1回住民が集まって町内約860カ所の雨水ますへの薬剤投入などを実施。植木鉢の皿やバケツなどには水がたまらないよう気を配る。「庭に出られないほど蚊は多かったが、かなり減った」(杉山昌樹自治会長)。活動は周辺自治会にも広がっている。

(編集委員 木村彰)

[日本経済新聞夕刊2016年7月21日付]

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