「怪異」の政治社会学 高谷知佳著神威に動揺する社会に迫る

(講談社・1750円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

昔の人々は、神仏におびえる心をもっていた。寺社でひきおこされる不吉な予兆に、けっこう本気でうろたえている。時の政権がその宗教的な対応へ、おおまじめにとりくんでもいた。

しかし、時代が下るにつれて、そういう霊的な不安は小さくなる。人々は、さまざまな怪異現象を、ある種のエンタテインメントとして、うけとりだす。

この変化を、魔術からの解放として、かたづけるべきではない。著者は、室町時代の霊的社会史とでもよぶべき趨勢に、目をむける。そして、この時代が前の時代より、人々の不安を増幅させていることに、気がついた。世俗化が進行する前に、社会は神威で動揺する度合いを強めている。その歴史的なからくりに、せまる。

★★★★

(風俗史家 井上章一)

[日本経済新聞夕刊2016年7月21日付]

★★★★★ 傑作
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…

「怪異」の政治社会学 室町人の思考をさぐる (講談社選書メチエ)

著者 : 高谷 知佳
出版 : 講談社
価格 : 1,890円 (税込み)

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