まっぷたつの先生 木村紅美著教師と教え子の微妙な感情

(中央公論新社・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

高校生の青と入れ代わりに浴室に入り、沙世がシャワーを浴びるシーンがある。もしもいま、青がこちらへやってきたら自分は拒まないだろう、と思うシーンだ。そのとき沙世は30歳。その直前には、青の寝顔をじっと覗(のぞ)き込むシーンがある。アパートの合鍵を渡していたので、青は勝手に入っては読書したり昼寝したりしていたのだ。

青がまだ半ズボンを履(は)いていたころ、彼の父親と恋に落ちた沙世は、別れてからも彼の住む街にいた。傷ついた沙世と、家に帰りたくない青の、微妙な感情がこのシーンからゆらゆらと立ちのぼっている。教師と教え子たちのその後を描くこの長編の、これは脇筋といっていい場面だが、妙に印象深いのである。

★★★★

(文芸評論家 北上次郎)

[日本経済新聞夕刊2016年7月21日付]

★★★★★ 傑作
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…

まっぷたつの先生

著者 : 木村 紅美
出版 : 中央公論新社
価格 : 1,728円 (税込み)

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