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家計改善あの手この手

空き家の実家、貸してお得 家賃保証や改修費不要

2016/7/23 日本経済新聞 夕刊

 老親が高齢者施設に移ったり、亡くなったりして誰も住まなくなった実家をどうするか――。歴史と思い出が刻まれた家は簡単に売れないもの。こんな悩みを抱える人は少なくない。放置すれば近所迷惑になり、維持管理費もかさむ。選択肢のひとつが手放さずに貸して収益を得る方法だ。

移住・住みかえ支援機構は、空き家を借り上げて転貸し賃料収入を保証

 「両親が大切にし、自分もいずれ住むかもしれず、手放したくない」。東京都に住むパート女性のAさん(53)の実家は千葉県船橋市の郊外にある木造2階建て。住んでいた父が亡くなり母も高齢者施設に移った。「いつ戻れるか分からない」と実家を巡る悩みはつきない。

 人が住まない家は急速に傷む。「定期的な草むしりや換気などを自分でやっても、空き家管理業者に頼んでも手間や金銭の負担は大きい」と考えた。

 Aさんが頼ったのが、大手住宅メーカーや金融機関の協賛で運営する一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI、東京・千代田)が全国で提供する「マイホーム借上げ制度」だ。

 50歳以上の中高年の持ち家で一定の耐震性があるものを最長で終身にわたって借り上げ、子育て世帯などに転貸。賃料収入も保証する。入居者が一度決まれば空室になっても保証家賃を支払う。万一の資金不足に備え国の基金による保証も備える。

 さらに、3年で契約が終わる定期借家契約を活用し、持ち主は家に戻るか、再契約でさらに貸すかをそのつど選べる。

空家・空地管理センターは、改修後の家を公開し空き家活用をアピールする(東京都内)

 それゆえ賃料は相場より1~2割安く設定。今回の物件は築19年、延べ床面積は約100平方メートルで賃料が月10万8千円だ。5人家族の借り手が見つかった。

 持ち主の手取りはここから15%差し引いた金額で、今回は9万1800円。15%のうち10%は家賃保証の積立金、5%は提携不動産会社の管理料だ。必要な範囲で持ち主負担によるリフォームが必要だが、壁紙貼り替えなど30万円強で済んだ。

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 実家は郊外だけに借り手が見つかりにくいリスクもあった。Aさんは「一般の不動産会社を通じて貸すのと比べ得られる賃料は安くなるが、空室時の保証など仕組みが充実していて安心」と満足する。

 制度の累計契約数は820件を超えた。優良な新築住宅に証明書を発行し、年齢を問わず制度を使える仕組みもある。大垣尚司・代表理事は「家を持て余す中高年、広い家が必要な若年層らの間で家を資産として循環させたい」という。

 NPO法人空家・空地管理センター(埼玉県所沢市)も空き家を借り上げ転貸するサービス「AKARI(あかり)」を首都圏で始めた。東京などで4物件が進行中だ。

 特徴は、持ち主が改修費を負担しなくていいかわりに、得られる賃料は物件に課される固定資産税、都市計画税と同額分だけという点だ。上田真一・代表理事は「改修に大金を投じてまで多くの賃料収入はいらず、税負担や管理費による家計のマイナスを補えればいいという人が多い」と話す。

 築数十年だと改修に200万~300万円前後かかることがある。毎年の出費も税金のほか定期清掃のため契約を続ける電気や水道の基本料金、万一に備える火災保険の保険料などで計30万~50万円に上ることが多いという。税負担は家賃で賄い、人に住んでもらって管理費も削る。

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 提携する不動産会社が3~7年の定期借家契約で転貸。法令を守った上で旅行者を有料で泊める「民泊」にしたり店舗に変えたりする相談にも応じる。

 今後は改修費の一部を持ち主負担にする手法も取り入れ、改修費はかさむが賃料の高くない物件や地方にも対応していく。

 都市部は民間業者の「リロケーションサービス」も多いが、地方は選択肢が限られる。自治体が空き家情報を発信する「空き家バンク」の利用も一案だ。

 貸家は空き家より土地などの資産評価額が下がり、相続税の節税対策にもなる。ただ、貸すのが難しいなら売却も検討したい。相続した空き家を売却して得た利益について条件を満たせば3000万円を特別控除する措置も始まった。実家の将来を夏休みに考えてみてはどうだろう。

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■放置なら税金増も
 住む予定がない実家の相続を放棄する人もいるが、放置すれば空き家問題に拍車をかける。昨年5月に全面施行した空き家対策特別措置法により倒壊の危険などがある空き家に指定されると固定資産税が最大6倍に増える。放置は禁物だ。

(企業報道部 大林広樹)

[日本経済新聞夕刊2016年7月20日付]

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