ライフコラム

子どもの学び

伊能忠敬の地図、沿岸を歩いた距離と角度を組み合わせ

2016/7/19 日本経済新聞 プラスワン

PIXTA
スーちゃん 伊能忠敬が作った日本地図を見たよ
森羅万象博士 社会の授業で習ったのかい?海岸線を歩いて距離を測ったんだ。
スーちゃん 先生がとても正確な地図だってほめていたよ。
森羅万象博士 測量法の工夫を算数を使って説明しよう。

博士より 伊能忠敬(いのうただたか)は1800年から17年かけて日本中を歩いて沿岸を測量した。その記録をもとに作ったのが「大日本沿海(えんかい)輿地(よち)全図」だ。今の測量技術で作った地図と比べても、ちがいは0.2%しかないそうだ。

忠敬は目印と目印の間の距離(きょり)を測り、いま来た方角を調べた。目印の間隔は短いときは約18メートル、長い直線で見通しのよい場合は100メートル以上になった。カーブが多い場所では目印の間隔をせまくして、こまめに測量した。

最初のころは自らの歩幅で距離を測った。1歩が約69cmになるように訓練したそうだ。その後はより正確に距離を測るため、専用の縄(なわ)や鉄のくさりなどを使った。今でいうと巻き尺のようなものだね。

正確な測量のコツは算数を使って説明できるよ。キーワードは「平行」と「錯角(さっかく)」だ。忠敬の測量を説明する前に、ちょっと平行と錯角について勉強してみよう。

上の左側の図のように、平行な2本の線に対してななめに直線をひく。このときにできる角が「同位角」や「錯角」だ。平行な線だと同位角どうし、錯角どうしは角度が等しくなる。この性質を使うと、そのとなりにある「問題」のような図形の角度を求めることができる。

では、忠敬の測量で平行と錯角がどのように使われたのかを説明しよう。「伊能忠敬の測量法」のように、A、B、C、Dの地点に目印を置いて測量する。A、B、C、Dのそれぞれの目印の地点から南北に延びる4本の直線はいずれも平行だ。

そのうえで、A地点で南北の線と線ABの間にできる角をa、B地点でも同じように角a’とする。この2つは錯角だとわかるよね。角aと角a’の角度は等しい。同じように角bと点角b’、角cと角c’も錯角だね。角b=角b’、角c=角c’が成り立つよ。

実際に測量してみると角aと角a’の角度が必ずしも同じ値になるわけでなはい。そこで、角aと角a’を足して2で割った平均値を記録した。このことでずれを小さくできた。このほかにも、忠敬たちが測った角度は非常に正確だ。

忠敬のすぐれた点は地図づくりを誰もが正確にできる仕組みを考えたことだ。測量作業には多くの人が参加した。だから、測量の手順と地図を描くやり方を決めて、みんなに徹底(てってい)させた。小学生でもできるから、忠敬のやり方で測量して地図を作ってみてはどうかな。

■地球の大きさも求めたよ

博士からひとこと 伊能忠敬はもともと日本地図を作りたかったわけではない。本当に知りたかったのは地球の大きさだ。50歳になって天文学を学び、地球について知りたくなったみたいなんだ。
江戸時代は自由に全国を旅することができなかった。日本の正確な地図を作るという江戸幕府の事業で許可してもらい、海岸線の測量をしながら北極星を観測した。北極星は常には北にあるからだ。見える角度の差などから地球の緯度(いど)が1度のときの距離を測量から求め、地球の1周の長さを計算した。今の単位で約4万キロメートルで、非常に正確なんだ。

(取材協力=細水保宏・明星大学客員教授)

[日経プラスワン2016年7月16日付]

ライフコラム 新着記事

ALL CHANNEL