ボーカル5人組「LE VELVETS」 品位と個性
男性5人組のボーカルグループ「LE VELVETS(ル・ベルベッツ)」が注目を集めている。2012年のメジャーデビュー以来徐々にファン層を拡大し、昨年発表したアルバムは、オリコンのデイリーランキングで最高6位に食い込んだ。
京都市立芸術大学出身のテノール佐賀龍彦、東京芸術大学出身のバリトン宮原浩暢ら、全員が音大で声楽を学んだ実力派だ。デビュー当初はクラシック出身のポピュラー系グループとして売り出し、経歴や端正な容姿が話題を呼んだものの、同時期に登場した他のポピュラー系コーラスグループのなかに埋もれ、個性をアピールできなかった。
そこで、マネジメントを担当するエスエル・カンパニーの大谷勝己氏が、アーティスト育成に実績のあるエピックレコードジャパンの青木聡氏にプロデュースを依頼した。青木氏は14年に彼らの公演を見て「クラシックから学んだ確かな実力と品位、五人五様の個性がある」と判断。オペラの名曲、ミュージカル、タンゴなど個人の特性を見極めた上で、歌う楽曲を選ぶようにした。服装は親しみやすさと品位を両立させた黒のジャケットとシャツに統一。公演での客席パフォーマンスもやめ「歌の質で勝負する姿勢を打ち出した」(青木氏)。
昨年からは夏フェス、イベントにも積極的に出演し、ミュージカルなどグループを離れての個人活動も増やした。その結果、各自が持ち味を伸ばす形で成長し、グループに好循環が生まれた。ファンも60代の女性から20~30代まで、幅広い層に拡大した。
こうして昨年9月に発表したアルバムが「ネオ・クラシック」。タンゴの巨匠パブロ・シーグレル作曲「ロッホタンゴ」は、宮原の持ち味である低音の魅力を最大限に生かした。イタリアの伝統歌曲「オー・ソレ・ミオ」はテノール佐藤隆紀の包み込むような歌声の美質を生かしている。CDの売り上げは7千枚。クラシック系アルバムとしては異例の売り上げを記録した。
アルバム発売直後、渋谷のオーチャードホールで開いた3日間のライブはいずれも満席。青木氏は「彼らはスターの素質がある。ポピュラーの人気アーティストに負けない存在になってほしい」と期待する。
(岩)
[日本経済新聞夕刊2016年7月13日付]
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