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 「仕事の企画提案が通らない。上司に説明しても理解してもらえない」。そんな悩みを抱える若手は少なくない。上司が提案を通さない理由の一つには、提案者の説明の仕方の悪さがあるかもしれない。説明の準備は万全か、タイミングや内容説明の順番は正しいのか? あなたはその説明で損していませんか――。

企画提案で必須の説明力には「整理力」「かみ砕く力」「興味を引く力」の3つがあると説くのは、一般社団法人教育コミュニケーション協会(東京・港)の木暮太一代表理事だ。

説明の仕方の講座で学ぶ受講生たち(教育コミュニケーション協会の風景)

説明の仕方の講座で学ぶ受講生たち(教育コミュニケーション協会の風景)

木暮さんによると最初の整理力は、日ごろの報告・連絡・相談の「ホウレンソウ」に必要になる。ダラダラと続く話は、誰が聞いていてもイライラするものだ。2番目のかみ砕く力は、考え方や環境の違う相手と話すときに、相手にわかる言葉を使うこと。

困り事察して

その上で木暮さんは「プレゼンテーションに最も必要なのは3番目の『興味を引く力』だ」と話す。興味を引く相手はまず上司である。そのためには、相手が何に困っているかを察することが必要だという。上司が取り組みたいと考えていても実際には手がつけられていない課題はないだろうか。それを探して、自分の企画提案で、その一部が解決できるとアピールすればいい。上司が課せられている組織目標に照らし合わせ、相手が潜在的に持っている不満を取り除けるように話をすることが重要だ。

IDやパスワードが増え過ぎて困っている会社を例に、企画提案に使える具体的な類型を2つあげてくれたのは、マネジメントコンサルタントの浜田秀彦さん。1つ目はこうだ。「IDやパスワードを忘れて社員が困ることがよくありますよね。(私が提案した)このツールを使えばその問題は解消できます」。困りごとの解決が強調されるため、問題解決型話法と呼ぶ。

もう1つの類型は「IDやパスワードがいくら増えても、即座に取り出せて使うことができれば快適ですよね。このツールならそれが実現できます」という話し方。希望通りになることを強調するので、希望実現話法という。「相手の困りごとや希望を察して提案に盛り込むとプレゼンには効果的」(浜田さん)というわけだ。

このように何が解決できるかを前置きして興味を引いた上で、あとは論理的に話す。木暮さんは、その方法として「TNPREP(テンプレップ)の法則」(図)を提唱する。

数字で説得力

まず話のテーマ(T)を明らかにし、話の要点がいくつ(N)あるかを示す。その要点(P)・結論を簡潔に話した後、なぜそう言えるかの理由(R)、具体例(E)を並べ、最後に要点(P)・結論を再度念押しするというものだ。理由や背景から話し始めるのは避けよう。会議の席での提案ではない場合は「相手も忙しいので提案のテーマを伝えた後、『今、話していいでしょうか』と確認することも忘れずに」(木暮さん)。

理由や具体例では、根拠となる時間や金銭面などの数字を入れるようにする。話し方研究所(東京・中央)の福田賢司社長は「数字が出しにくい場合、その分野で権威ある人物の見解や言葉を援用するのも一つの方法」とアドバイスする。また「他社や他製品などと比較して強調する手法も使える」。掃除機メーカーの英・ダイソンの比較広告が典型的だが「トップセールスマンはプレゼンで上手に比較を使っている」という。どんな比較例が上司に響くかを推察する必要がある。

福田さんは、何が提案のカギなのか、説明する側の思いだけでなく、聞かされる側の上司の視線で考えることも重要だとする。話し方研究所の「説明力をつける話し方セミナー」では、参加者に「私のこだわり」を2分で説明させているが、聞き手の視線で考えられる人は意外に少ないという。「例えばオーダーワイシャツの良さをとうとうと話すことに終始してしまう人がいる。しかし聞き手が一番知りたいのは値段。それを最初に押さえなくては、話についてこない」

最後に浜田さんはテクニックとしての秘策を一言教えてくれた。それは「相手が意見できる余地を残す」こと。つまり「A案とB案、どちらにしようか決めかねていますが」など、上司に判断を委ねる点をどこかに用意しておくことだ。「重箱の隅をつつくタイプの上司ほど、何か文句を言いたがる。その機先を制する」というわけだ。取り上げられなくてもへこまずに、どこがダメかを再考し、次にチャレンジしていこう。

[日本経済新聞夕刊2016年7月11日付]

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