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梅雨の終わりに大雨が降るのはなぜ? 湿った空気と上昇気流、積乱雲作る

2016/7/12 日本経済新聞 プラスワン

■梅雨の終わりに大雨が多いのは、なぜ?

スーちゃん 6月に九州や中国地方で大雨が降ったよね。「梅雨(つゆ)末期の豪雨(ごうう)のよう」って、テレビで天気予報士さんが言っていたよ。梅雨の終わりには大雨が降ることが多いけど、どういう仕組みなのかな。

■湿った空気と上昇気流が積乱雲を作るんだ

森羅万象博士より 梅雨のころ、北海道の北側にある「オホーツク海高気圧(オホーツク海気団)」と南の海上にある「太平洋高気圧(小笠原(おがさわら)気団)」が日本付近でぶつかって、押しくらまんじゅうをしている。暖かい空気のかたまりと冷たい空気のかたまりの境目は線のように延びて「前線」ができる。これが「梅雨(ばいう)前線」だ。北と南の高気圧はがっぷり四つの状態だから、前線はあまり動かず、1カ月以上も雨やくもりの日が続く。

 梅雨が終わりに近づくと、南西の方から暖かくて湿(しめ)った空気のかたまりが押し寄せ、さらに南からも暖かい湿った風が吹きつけてくる。これが大雨をもたらす。よく天気予報で「前線を刺激(しげき)して活発になる」と説明する状況だ。

 このタイプの梅雨の大雨は西日本で起こりやすい。特に、九州や中国、四国地方に多い。約300人の死者と行方不明者を出した1982年の長崎豪雨や2012年の九州北部豪雨など、大きな被害(ひがい)をもたらす災害がたびたび起きている。このほか、新潟県などの北陸地方でも梅雨の末期に豪雨が多い。

 大雨が降るのは「暖かい湿った空気」と強い「上昇(じょうしょう)気流」がそろったときだ。水蒸気を多く含んだ空気が上空へ行き、膨(ふく)らんで温度が下がると、冷やされた水蒸気が細かな水のつぶになる。これらが集まって雲になる。上昇気流が強いと、空気はどんどん上へ向かう。雨つぶが次から次へと発生して雲が上へ延び、大きな「積乱(せきらん)雲」ができる。

 梅雨の終わりには、梅雨前線に沿うように中国大陸の南の方から湿った暖かい空気のかたまりが日本へ流れ込むようになる。この空気のかたまりは天気図で長く延びた舌(した)のようにみえる。「湿舌(しつぜつ)」と呼ぶ現象だ。湿舌が西から延びて東シナ海の上を通る間に、大量の水蒸気を取り込む。

 地上では、高気圧からは時計回りに風がふき出す。夏が近づいて太平洋高気圧が勢力を増すと、西側や北側へ張り出してくる。元気になった太平洋高気圧の西のへりでふき出す風によって、南の海から暖かくて湿った風が日本へ向かってふき込むようになる。

 もともと、湿舌では弱い上昇気流が発生している。そこに大量の水蒸気を含んだ南よりの風がぶつかると、一気に持ち上げられて、強い上昇気流になる。積乱雲が次々とできて、強い雨が長時間にわたって降り続く。それで記録的な大雨になるんだ。

 湿舌が発生しているとき、大雨が降るのは天気図にある梅雨前線よりも南側になることが多いよ。

 記録的な大雨には地形も関係することが多い。暖かくて湿った風が山の斜面(しゃめん)にぶつかると、強い上昇気流ができる。風がどんどん流れ込んでくると、積乱雲が次々と発生しやすい。

 太平洋高気圧の勢力がさらに強まると、梅雨前線は北側へ押し上げられる。そうなれば梅雨明けだ。梅雨前線がいすわり続けると、今後も大雨となる可能性がある。天気予報を注意して聞いてみよう。

■東日本は秋の方が大雨

博士からひとこと 九州など西日本では、梅雨の時期にあたる6~7月の雨量が多くなる。これに対し、関東など東日本では、9~10月の秋雨(あきさめ)前線のころの方が雨量が多くなりやすい。
 秋雨前線はもとをたどれば梅雨前線だ。どちらも、北からの冷たい空気のかたまりと南の暖かい空気のかたまりがぶつかり、その境目に前線ができる。
 梅雨前線の方が秋雨前線よりも活発だ。ただ、秋は台風が日本に近づくシーズンに重なる。台風の影響で南の海からの暖かい湿った空気が運ばれてくると、秋雨前線が活発になって大雨を降らせるようになるんだ。

(取材協力=竹見哲也・京都大学准教授)

[日経プラスワン2016年7月9日付]

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