夏休みの宿題 昔から? 明治期、学習中断さける

イチ子お姉さん もうすぐ楽しい夏休み。この長い休みの宿題っていつからあるか知ってる? 昔の宿題帳を見ると漢字や算数、日記もあり今と変わらないね。
からすけ えっ、100年以上前からあるの? 僕はいつもためちゃってギリギリでやってるけど、昔の子どもたちも仕上げるのに追われていたのかな。

明治期、学習中断さける

イチ子 夏休みは明治時代にできたの。今の学校制度が始まったのは1872年(明治5年)。学校教育の仕組み「学制」(キーワード)を法令で定めて、子どもを小学校へ行かせることが決まったの。それから9年後の81年(明治14年)に文部省(今の文部科学省)が都道府県あてに出した文書では「夏季休業日」を定めているわ。これより後に夏休みが一般(いっぱん)に広がったそうよ。

<キーワード>
学制 学校制度に関する日本最初の法令。これにより全国に2万校以上の小学校が建ち、子どもたちが通うようになった。
標語コンクール 交通安全や防犯を呼びかける標語を競う。公的機関が主催する例が多い。創造力を試すため課題に採用する例が増えた。

からすけ どうして夏休みをつくることになったんだろう。

イチ子 欧米(おうべい)の国々をモデルにしたというのが通説よ。欧米では秋から春にかけて晴れた日が少ないから、夏はいっぱい太陽を浴びるべきだという考えがあったの。それに新学年が始まるのは9月。学年が切り替(か)わるタイミングで、長い休みを取るのには良かった。当時は欧米の教育法を取り入れ日本をよくしようという考えがあったので、同じ時期に同じような夏休みを取り込んだってわけ。

からすけ でも、日本で宿題が出るのはどうして? 米国の友達はほとんどないって言ってたよ。

イチ子 日本は4月から新学年が始まるわね。4カ月ほどで夏休みに入ることになる。勉強に慣れてきたころなのに中断するのはもったいないわ。長い休みで授業内容を忘れることもあるでしょ。休み中にも勉強を続けた方がいいから、宿題が始まったのよ。

からすけ なるほど。

イチ子 夏休みの宿題は明治時代にはあったみたい。2006年に宮崎(みやざき)県文書センターで1910年(明治43年)当時の夏休みの宿題帳が見つかったわ。中身を見ると算数、理科の問題に漢字の書き取りや、日記もあるの。当時の尋常小学校の児童のもので、表紙には「復習帳」「休暇(きゅうか)日誌」とある。宿題帳は学校の先生がつくったものなので名前はばらばらなの。

からすけ 昔の子どもはどんなことを書いているの?

イチ子 例えば算数なら「教科書18ページの問題を解きなさい」、理科なら「植物の根の作用や構造について書きなさい」といった問いに答えているわね。ある子の日記には「目をさましてみると太陽の光がうつってゐ(い)たのですぐおきて書物を讀(読)みました」とある。旧仮名(かな)遣(づか)いや漢字の古い字体で書き込んでいるね。1ページを分割して上半分が学習課題、下半分は日記という形がほとんど。1日1ページこなしていくのね。

からすけ 宿題の量は少ないんだね。

戦時中は全国で同じ内容

イチ子 大正時代になると出版社が夏休みの宿題用の教材をつくり始めたの。工夫を重ねるうちに徐々に問題と日記は切り離すようになり、1ページに問題がいくつも載(の)るようになったわ。第2次世界大戦中には文部省が宿題帳をつくったので全国で同じ内容になったそうよ。

からすけ 戦争は宿題にも影響(えいきょう)を与えていたんだ。

イチ子 戦後には各都道府県の教員らの組織が地域ならではの宿題をつくるようになったのよ。その土地の民話や植物など郷土に関する問題、農村地域では昆虫採集をしようといった課題があり、地域らしさを生かした宿題が増えたの。今は学校の教員たちがつくるのは手間がかかるし、民間の教材の方が内容が手厚いこともあってほとんど切り替わっているわね。

からすけ そんな歴史があるんだね。

イチ子 平成に入ると絵画や読書感想文、標語コンクール(キーワード)などの課題が増えたわね。子どもの個性や意欲に任せるようになったの。さらに90年代後半から2000年代にインターネットが広がって「調べ学習」が増えたわ。自分が住む地域や方言を調べたことはなかったかな。そんな自主的な研究を重くみるようになったわ。

からすけ 僕は自由研究のテーマを決めるのが苦手なんだよね。

イチ子 自由研究の参考イベントはたくさんあるわね。例えば「夏休み2016宿題・自由研究大作戦」(日本能率協会主催(しゅさい)。事前登録制で入場無料)は東京(7月21~23日)、仙台(せんだい)(7月29.30日)、大阪(8月4~6日)で開くの。日野自動車(東京会場)がペーパークラフトでトラックの作り方を教えるほか、20以上の企業・団体が体験学習を用意しているわ。

■自由研究は面白がって

豊島岡女子学園中学高等学校の神谷正昌先生の話 夏休みの宿題と聞いて自由研究を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。長い休みに学習のリズムが崩(くず)れないよう、国語や算数、数学や英語など毎日コツコツやる宿題がある一方で、普段の学期中ではできないような課題があります。自由研究は夏休みならではの課題と言えるでしょう。
自由研究で何をやったらいいのか悩(なや)み、親に相談したり手伝ってもらったりした経験がある人もいるでしょう。しかし普段の学習が出題者の用意した解答を求めているのに対し、まだ誰(だれ)も答えに到達(とうたつ)していない問題を明らかにするのが「研究」です。しかも自分で問題をたてることができるのです。こんなに楽しいワクワクすることはありません。それができるのが自由研究です。受け身の姿勢でやらされるのではなく、興味あることに積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。
今週のニュースなテストの答え 問1=70、問2=徳島

[日経プラスワン2016年7月9日付]

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