専門家が選ぶ 建物が魅力的な美術館・ベスト10

美しい空間 見て入って堪能

東京・上野の国立西洋美術館が世界遺産に登録される見通しだ。フランスの巨匠、ル・コルビュジエの建築が評価された。西洋美術館以外にも有名建築家が設計した美しい美術館はたくさんある。そこでアートや建築に詳しい専門家に建物が魅力的な美術館を選んでもらった。

1位の豊島美術館は「現代建築とアートの奇跡的なコラボレーションが見られる」(東北大学大学院工学研究科教授の五十嵐太郎さん)希少な美術館。西沢立衛氏が設計した水滴を模した建物と、内藤礼の作品が相互作用することで1つの芸術品を作り上げている。豊島の自然あふれるみずみずしい環境にうまく融合し、アートと建築、環境の3つが一体化している。アクセスは決して良くないが、外国人観光客の人気も高い。

2位以下も建築美で定評のある美術館が並んだ。建築家にとって美術館の設計は「他の公共建築と違って、自分が追求する美を形にしやすく、いつかやってみたいプロジェクト」(建築家の藤森照信さん)という。所蔵品はもちろん、美しい空間を意識しながらの美術館巡りはいかが。

1位 豊島美術館(香川県土庄町) 820ポイント
設計:西沢立衛氏 水滴をイメージした曲線美

瀬戸内海に浮かぶ豊島(てしま)の棚田に、水滴の形をした建物が現れる。柱やはりは一切なく、コンクリートの曲線が水平に広がる約2400平方メートルのワンルーム。天井が2カ所開き、光や風、雨が流れ、鳥の声が耳に届く。

設計は西沢立衛氏。内藤礼の作品「母型」は床からしみ出る水滴が傾斜をたどって集まり、1日の最後に泉ができあがる仕掛けで、空間自体が作品だ。建物と一体化していて「とにかく行ってみて!と言いたくなる魅力的な場所」(黒岩晶さん)。

7月18日から9月4日まで瀬戸内国際芸術祭が開催中で混雑する。

(1)1540円(2)3月1日~11月30日は火曜、それ以外は火曜~木曜(3)高松港または宇野港から船で約40分(4)0879・68・3555

2位 豊田市美術館(愛知県豊田市) 630ポイント
設計:谷口吉生氏 庭園と一体、優美な景観

七州城と呼ばれた旧拳母(ころも)藩の城の跡地にあり、市街地を見下ろす小高い丘に立つ。米ニューヨーク近代美術館の増築を手掛け、世界的に有名な谷口吉生氏が設計した。モスグリーンのスレートと乳白色のすりガラスを使って自然光を取り込み、「背筋がピンとするような緊張感のある美しい展示空間」(五十嵐太郎さん)。国内外の近現代美術作品を所蔵し、質の高い企画展でも有名。庭園にも作品が並び「建築と庭園が一体化し、美しいランドスケープを生み出している」(磯達雄さん)。

(1)300円(2)月曜、展示替えで7月14日まで臨時休館(3)名鉄豊田市駅から徒歩15分(4)0565・34・6610

3位 青森県立美術館(青森市) 570ポイント
設計:青木淳氏 発掘現場のような展示空間

建築家の青木淳氏が、隣接する三内丸山遺跡の発掘現場から着想を得て設計した。土の床や壁が露出した展示空間があり、「アートはホワイトキューブ(白くて中立的な箱形空間)で見るべし、という常識を覆す」(青野尚子さん)。「雪深い冬にも映える美しい建築」(暮沢剛巳さん)だ。奈良美智や棟方志功など青森県出身の芸術家の作品が豊富。開館10周年を迎え、7月2日~9月24日の毎週土曜に建築ツアーを開く。

(1)510円(2)第2、第4月曜(3)JR新青森駅から車で10分(4)017・783・3000

4位 金沢21世紀美術館(金沢市) 550ポイント
開放的な円形総ガラス張り

円形総ガラス張りの開放的な現代美術館。建築家ユニット「妹島和世+西沢立衛/SANAA」が設計。「周囲に開かれたロビーと様々なサイズの独立した展示室との関係性が見事」(佐藤慎也さん)。プールを模した作品など「建物と一体となったアートが楽しめる」(山下治子さん)。

(1)交流ゾーンは無料、展覧会ゾーンは有料(2)展覧会ゾーンは月曜(3)JR金沢駅からバス10分(4)076・220・2800

5位 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川県丸亀市)
大胆なファザード、来訪者を圧倒

丸亀駅前に立つ大胆なファサード(建物の正面)が来訪者を圧倒する。2位と同じ谷口氏が設計。「のびやかな建築空間に画家の猪熊氏の色彩豊かな作品が映える」(飯尾次郎さん)、「駅前の光景に合わせた落書きのような壁画が雰囲気があっていい」(藤森照信さん)。

(1)300円(2)展示替えで7月16日まで臨時休館(3)JR丸亀駅から徒歩1分(4)0877・24・7755

6位 MIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市)
光降り注ぐガラス屋根の玄関

自然環境を考慮して容積の80%以上が地中に埋まる。設計者は仏ルーヴル美術館のガラスのピラミッドで知られる米国の建築家、I.M.ペイ氏。幾何学的なガラス屋根の玄関が美しい。東洋の芸術作品を多く所蔵している。

(1)1100円(2)月曜(3)JR石山駅からバス約50分(4)0748・82・3411


7位 十和田市現代美術館(青森県十和田市)

官庁街通り全体を美術館に見立てて、通り沿いに「立方体や直方体をぼこぼこ置いた様がユニーク」(小川敦生さん)。ガラスの廊下がそれぞれをつなぐ。1位と同じ西沢氏が設計。

(1)510円(2)月曜(3)JR七戸十和田駅からバス40分前後(4)0176・20・1127

8位 東京都庭園美術館(東京都港区)

朝香宮家の自邸として昭和初期に造られた。「世界屈指のアール・デコ様式のインテリア」(藤森さん)。庭園も素晴らしい。国の重要文化財に指定。

(1)展覧会により変動(2)毎月第2、第4水曜、7月15日まで臨時休館(3)JR目黒駅から徒歩7分(4)03・3443・0201

9位 原美術館(東京都品川区)

昭和初期に造られた邸宅を活用した現代美術館。東京・銀座の和光本館などを手掛けた渡辺仁氏が設計した。ガラス張りのカフェも人気スポット。

(1)1100円(2)月曜(3)JR品川駅から徒歩15分(4)03・3445・0651

10位 イサム・ノグチ庭園美術館(高松市)

20世紀を代表する彫刻家イサム・ノグチの住居とアトリエを公開。「作家の制作環境に浸れる」(磯さん)。

(1)2160円(2)月、水、金、日曜、要予約(3)JR高松駅から車で25分(4)087・870・1500

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表の見方 数字は選者の評価を点数化。美術館名(所在地)。(1)大人1人の常設展入館料(2)主な休館日(祝日や年末年始などで変更あり)(3)アクセス(4)問い合わせ先電話番号、写真は各施設提供

調査の方法 建物が美しい美術館を専門家に聞き、3人以上が推薦した28施設の中から(1)環境との調和(2)収蔵品や展示品の魅力、を重視し選んでもらった。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。

青野尚子(ライター)▽飯尾次郎(スペルプラーツ編集)▽五十嵐太郎(東北大学大学院工学研究科教授)▽磯達雄(建築ライター)▽小川敦生(多摩美術大学教授)▽暮沢剛巳(東京工科大学デザイン学部教授)▽黒岩晶(ウェブマガジン「artscape」編集部)▽佐藤慎也(日本大学理工学部建築学科教授)▽藤森照信(建築家)▽山下治子(ミュージアム専門誌「ミュゼ」編集長)

[日経プラスワン2016年7月9日付]

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