ポーランドのボクサー エドゥアルド・ハルフォン著
収容所描く自伝的短編
東欧の国の拳闘士名鑑ではない。中米グアテマラのユダヤ系作家の短編集だ。表紙の美しさに惹(ひ)かれて「ラテンアメリカ文学」の棚から手に取った。
自伝的でありながら想像力に満ちた表題作は小さな傑作。
祖父の腕の謎の数字にアウシュビッツのユダヤ人収容所での空間と時間が浮かぶ。白状するほかないがこれはスポーツ小説ではない。でも、暗い牢獄(ろうごく)で「裁判のあいだに言ってはならないこと」をポーランド語で教えてくれた男はボクサーでなくてはならない。
「ドイツ人は自分がボクシングをするのを見たくて生かしたままにしているのだ」。むごくて悲しくてひんやりと誇らしい。ここはサッカーではなくボクシングだ。
★★★★
(スポーツライター 藤島大)
[日本経済新聞夕刊2016年7月7日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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