しゃらくせえ 鼠小僧伝 谷津矢車著
次郎吉の活躍ぶりが新鮮
谷津矢車が、はじめての白浪物で、また一つ傑作をものした。
しかも、題材はこれまで何人もの作家が手がけてきた鼠(ねずみ)小僧次郎吉である。だが、何と新鮮なことだろうか。
ひょんなことから盗みを働いて江戸所払いになった入墨(いれずみ)者――本書の次郎吉はそんな小悪党である。その次郎吉が刑期も終えず、勝手に許嫁(いいなずけ)と一人決めしたお里会いたさに江戸に戻ってくるや、彼女は金儲(もう)けのためなら殺しも厭(いと)わぬ呉服屋呉兵衛の女に。義賊と騒がれる一方で、町の仁医・七兵衛や静平―│この二人には意外な正体あり―│、瓦版屋の亀蔵らとともに、極悪人どもをやっつけるが、ラストには、山中貞雄の映画のような乾いたセンチメンタリズムが待っている。
★★★★★
(文芸評論家 縄田一男)
[日本経済新聞夕刊2016年7月7日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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