耐震診断、安心感補強 中古住宅は改修必要な場合も

自宅を購入する際に耐震性にこだわる人が増えている。安心して住める中古住宅を選ぶ時に役立つのが、建築士など専門家が事前にチェックする「耐震診断」サービスだ。依頼する時の留意点や、上手な利用法を探った。

「中古住宅の耐震診断では、間取り変更で壁が取り除かれていないかどうかが、重要なチェック項目になる」。こう指摘するのは、住宅診断を手掛ける、さくら事務所(東京・渋谷)の川野武士さんだ。耐震性と聞けば、一般の人の多くは柱や梁(はり)、基礎などに注目しがちで、壁についてはあまり関心が払われないという。

木造住宅の場合、壁の数や強さ、バランスのよい配置が耐震性を決める要素となる。ただ、リフォームで間取りを変える時に、壁の数を減らすケースもある。川野さんは、事前に建物の施工時や改修時の図面を確保しておくことを求めている。修繕履歴を把握できるからだ。中古住宅を購入する際、こうした図面がそろっているか確認しておくことを提案する。

耐震診断ではひび割れがないかもチェック(埼玉県川口市)

住宅の耐震性を調べる「耐震診断」は、住宅の設計図を基に柱や梁などの構造を確認し、その上で、基礎や柱の劣化状況を調べて耐震性能を計算する。柱や梁、壁の劣化などを目視する「一般診断」、建物を一部こわしながら調査する「精密診断」がある。

一般診断の目視で、「壁のひびなど不具合があると、雨水が入り込み、耐久性の劣化につながる」(川野さん)という。精密診断は建物の内外装をはがして接合部の様子を直接確認していく。劣化した木材の様子を部材ごとに評価する。

建築基準法で義務づける建物の耐震基準には、1981年5月までの着工分まで適用する「旧耐震基準」と、81年6月以降に着工した建物に対する「新耐震基準」がある。新基準は大きな地震も想定しており、中級クラスの地震にとどまった旧基準より厳しい。また、2000年の建築基準法改正によって同年6月以降に着工した木造住宅は、柱や梁の接合部分を金属で固定することが義務づけられている。

旧基準で建てられた中古住宅は、新基準に基づいて耐震診断をする必要がある。専門家が、図面を基に壁の配置が適正かどうかを判断。専用ソフトを使い、基準を満たすために必要な壁の配置などを算出する。

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耐震診断をするメリットは大きい。対象は中古物件が大半となる。さくら事務所の川野さんによると、耐震診断によって建物の耐震性のほか、どの程度の補強が必要か目安がわかるので、修繕の内容や優先順位を把握できる。リフォームを依頼するとき「施工会社の提案が適切かどうかを見極めるのに役立つ」(川野さん)という。

計測器を使い屋根裏の木材の水分量を調べる(東京都杉並区)

耐震診断は、住宅建設やリフォーム業とは一線を画し、住宅診断を専業とする会社が担当することが多い。国土交通省が所管する耐震診断資格者などの資格を持つ建築士などの専門家が対応する。依頼先を選ぶ際は、「受注実績や住宅建築に関する実務経験をチェックすると良い」(リクルート住まいカンパニー〈東京・中央〉の池本洋一SUUMO編集長)。

日本建築防災協会(東京・港)は、ホームページで「誰でもできるわが家の耐震診断」を公開している。増築したことがあるかなど10項目に答えると、「(耐震性が)ひとまず安心」「専門家に診てもらいましょう」などと示される。耐震性についてある程度把握しておいた上で、耐震診断を依頼する際の判断に役立てるとよい。

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金額はどれくらいかかるか。企業によって異なるが、さくら事務所が行う木造一戸建ての一般診断は6万5000円。精密診断は一般的には20万円前後が多い。補助金を出す自治体も多く、自治体に聞いてみるとよい。マンションの場合、延べ床面積1平方メートルあたり1000~3000円程度が多い。改修にかかる費用は木造一戸建ては建物全体で100万~150万円程度。

耐震基準に適合することを示す「耐震基準適合証明書」があれば、住宅ローン減税を受けられるメリットがある。不動産情報サイト「SUUMO」では、基準適合証明書をとっている建物を検索できる。

安心して住むためには耐震診断のほか、住宅診断も有効だ。住宅の雨漏り、木の柱や梁の含水率、配水管の状況などを調べる。埼玉県新座市に中古一戸建てを購入した会社員、萩原克己さん(52)は「住宅診断を受けてリフォームすれば長く住めることがわかった」と話す。備えを入念にして、いつまでも安心して暮らせる家にしたい。

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■事前に図面など確保
耐震診断では図面など準備しておくといい。中古の場合、現所有者の許可が必要だ。建築主が着工前に役所や民間検査機関に提出し法律に適合することの確認を受けた「確認申請書・確認済書」も重要。売り主経由で出してもらうといい。

(商品部 斎藤公也)

[日本経済新聞夕刊2016年7月6日付]

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