水不足、雨あれば大丈夫? ダム上流で降るかが重要

2016/7/5

イチからわかる

イチ子お姉さん 夏になると水不足が話題になることが増えたわ。今年は利根川上流のダムの水位が大きく下がっているの。猛暑(もうしょ)で水不足になったら大変よ。
からすけ 僕たちの生活に影響(えいきょう)はあるのかな。最近各地で記録的な豪雨(ごうう)が降っているけど、たくさん雨が降れば水不足にならないんじゃない?

ダムの上流で降るかが重要

イチ子 首都圏(けん)に水を供給する利根川水系の8つのダムで、6月は水位が大きく下がっているわ。過去25年間で最低の水準よ。川に水を放出できないから、農業や工業、生活用水として取る量を通常より10%減らす取水制限をしているの。梅雨の6月に制限するのは1987年以来らしいわ。

からすけ なぜ水がたまっていないの? 

イチ子 暖冬で雪があまり降らなかったことが響(ひび)いたそうよ。ダムには春先に雪解け水が流れ込むけど、今年は少なかったの。5月に好天が続いたのも響いたわ。田植えで水を多く使う4~6月にダムの水が少なくなるのは異常事態なの。

からすけ ダムの水が足りないとどうなるの?

イチ子 ダムは森に降った雨水を蓄(たくわ)えて、川を流れる水の量を調整しているの。長い間雨が降らなくても、ダムから放水すれば川が干上がらずに済むわ。ダムに水がたまっていないと、必要なときに川に水を送れないの。農業や工業、生活用水が不足して私たちの暮らしに支障が出るわ。

今年は雪解け水 少なく

からすけ 雨が降ればすべて解決するのかな?

イチ子 どこで雨が降るかが大事なの。ダムより上流で降ると雨水をためやすいし、山の土が雨水を吸って地下水としても蓄えられる。一方、下流で降ると、すぐに海に流れてしまうのが難点ね。

からすけ 雨がたくさん降れば水不足にならないんじゃないの? 最近ゲリラ豪雨(ごうう)がよく降るでしょ。

イチ子 上流ならいいけど、ゲリラ豪雨は大抵(たいてい)は都市部で起きて被害(ひがい)が大きくなるわね。上流の山と違い大量の雨水を吸収できる土壌(どじょう)が少ないから、水不足の解消につながりにくいの。

<キーワード>
 取水制限 ダムの貯水量が減った時に川から取る水の量を制限すること。一般家庭に影響が出ることは少ない。
 ゲリラ豪雨 数十分に数十ミリメートルの激しい雨が突然、局地的に降ること。予測が難しい。2008年、流行語に。

からすけ でも日本は水が豊富な印象があるけど。

イチ子 日本の自然条件は水資源を利用するには不利だわ。雨が特定の時期に集中して降る。梅雨の6月と台風が来る9~10月で年間の降雨量の約4割を占めるの。だからたくさん雨が降った時にダムを満水近くにして、雨が少ない時期に必要に応じて放水できるようにする必要があるの。

からすけ 梅雨は苦手だけど、たくさん雨が降らないと困るんだね。

イチ子 そう。日本の地形にも問題があるわ。日本の山は傾斜(けいしゃ)が急で険しい所が多く、河川は短いものが多い。上流で降った雨は短い時間で川から海へ出てしまうから水をじっくり蓄えられないの。米ミシシッピ川のように勾配(こうばい)が緩(ゆる)くてとても長い川があれば、時間をかけて周辺の土壌に水をじわじわ浸透(しんとう)させられるのにね。日本に大小合わせてダムが約3000基あるのは、不利な地形の中で水不足を防ぐためなのよ。

からすけ 首都圏では水道から水が出なくなることはほとんどないし、水不足ってそんなに深刻なの?

イチ子 最近は温暖化の影響からか降水量の年ごとの開きがすごく大きくなっているの。小雨の年は各地で水が足りない渇水(かっすい)が起きるわ。被害が大きかったのは94年の列島(れっとう)渇水。関東から九州まで広がり、水不足で約1400億円の農作物被害が出たわ。四国の吉野川の上流にある早明浦(さめうら)ダムはこのとき干上がって、その後何度も貯水率が0%になっているの。

からすけ そんなに大変なことが起きたんだ!

イチ子 普段から節水意識を持って生活したいね。東京では五輪開催(かいさい)で沸(わ)いた64年夏に大渇水が起きたの。世界から人が集まって水の需要(じゅよう)が一気に増えたのに供給が追いつかない。家庭で使える水の量が限られ、入浴や洗濯(せんたく)を制限したわ。衛生状態の悪化で食中毒になる人も出たのよ。

からすけ 2020年の東京五輪は大丈夫?

イチ子 首都圏の水がめになるダムは増えているの。水が行き渡るように利根川と荒(あら)川のどちらからも水を取れるよう水路ができたの。「よっぽど雨の少ない年にならなければ大丈夫」と水資源機構の後藤恭央さんは言っているわ。

■雨乞い方法 世界に色々

灘中学校・高等学校の藪本勝治先生の話 天気は不順が続いても神頼みするしかありません。では雨乞(あまご)いの方法はというと地域により様々です。火をたいて煙(けむり)を立てる、地に水をまいて雨を呼ぶ、神に歌や踊(おど)りを奉納(ほうのう)して懇願(こんがん)するといった方法は世界各地にみられます。また聖人像や仏像を日照りにさらして苦しめることで神仏を脅迫(きょうはく)するという方法も意外に広く分布しています。
 一方日本では古来、天候不順は君主の不徳によると考えられたため、為政(いせい)者は干ばつや飢饉(ききん)のたびに「徳政」という貧民救済政策をとりました。中でも鎌倉(かまくら)幕府の執権(しっけん)北条泰時(やすとき)は自腹を切って稲(いね)の種もみの給付や借金の返済免除(めんじょ)などを行い、理想的な政治(せいじ)家として名を残しました。水不足が懸念(けねん)される今夏、参院選では与野党こぞって富の再分配を訴えていますが、本当に実現されるのか。為政者は試されているのかもしれません。
今週のニュースなテストの答え 問1=EU、問2=HV

[日経プラスワン2016年7月2日付]

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