切れない包丁が見違える コツをつかめば砥石で10分
コツつかめば砥石で10分
包丁は使うほどに摩耗し、刃先が丸まってくることで切れ味が落ちてしまう。トマトを切る時に力を入れないと刃が入らず形が崩れてしまう場合や、ネギの下の部分がくっついてしまうときは、砥石で研いで切れ味を取り戻そう。
砥石を使って包丁を研ぐのはいかにも職人技といった雰囲気で敬遠している人も多いが「実は技術的には難しくない」。刃物や調理器具を製造販売する貝印(東京・千代田)の包丁マイスター、林泰彦さんは「コツさえ押さえれば10分程度でできるようになる」と話す。
まずは包丁の種類を確認しよう。家庭では万能包丁といわれる三徳包丁や先のとがった牛刀を使う人が大半だろう。これらの洋包丁は両側に刃がついているので両面を研ぐ必要がある。一方、和包丁では菜切り包丁は両刃だが、出刃包丁や刺身包丁は片刃で、研ぐのは片側だけだ。
素材にも注意したい。最近は手入れのしやすさや手ごろな価格からステンレス製を選ぶ人が多い。一般的な鋼やステンレスの包丁は砥石で研ぐことができるが、セラミックタイプの包丁を家庭で研ぐのは難しいという。
林さんによると、包丁を研ぐ際に重要なのは「砥石に対する刃の角度を保つこと」。三徳包丁を右利きの人が研ぐ場合、まずは右手の人さし指で包丁の背中、親指で刃の根元を押さえるように持つ。柄の部分も含めて3点をしっかり持つことで、砥石にあてる角度が安定しやすくなる。
包丁は砥石に対して45度の角度で置く。左手の人さし指と中指は研ぐ部分に軽くそえる。包丁の刃を小指1本分(15度)ほど立て、肩の力を抜いて前後に動かす。全体がざらついてきたら反対の刃も同じように研ぐ。最後に新聞紙にこすりつけて「バリ」と呼ばれるざらつきを取り除けば終了。新聞紙に刃をあててすっと切れれば合格だ。
砥石の表面は次第にすり減り、研ぎにくくなる。面直し用と呼ばれる別の砥石で表面を平らに直すのも忘れずに。
砥石以外の研ぎ方もある。家事・住宅アドバイザーの藤原千秋さんのおすすめは簡易研ぎ器。シャープナーなどの名前で販売している。ヤスリのようなハンディ型や包丁を挟むタイプなどがある。こまめに研ぐ必要があるが、短時間で誰でも手軽に切れ味を取り戻せる。10秒ほどで研げる電動式もある。ライフスタイルや住環境など、自分に合った一品を見つけてみよう。
すぐ洗う さびを防ぐ
日々の手入れも重要だ。調理が終わったあと、使用済みの食器と一緒に洗おうと、包丁とまな板をそのままにしていないだろうか。ステンレスの包丁であっても、食材に含まれる塩分や水分、酸が空気に触れて酸化することで、さびることがあるという。面倒でも調理後は料理を食べる前に、包丁とまな板だけでも洗っておこう。
洗うときに大切なのは「汚れと水分をしっかり落とすこと」(林さん)。包丁の刃をまな板に押しつけ、スポンジやコルクでこする。普段の手入れには中性洗剤を使う。汚れや洗剤を流したあとは、さっと熱湯をかけると殺菌できる上に水分も蒸発しやすくなる。除菌のためと漂白剤を使う人がいるが「漂白剤に含まれる塩素の影響でステンレスでもさびやすくなるのでおすすめしない」(林さん)。
清潔なふきんで水気を拭いたら、あとは自然乾燥でしっかり乾かせばよい。風通しがよく、湿気の少ない場所で保管するのが鉄則だ。
たまにしか使わない包丁は「新聞紙でくるんで保管するといい」(林さん)。適度な通気性に加えて、インクの油分がさび止めの効果も果たしてくれるという。
切れにくい包丁では調理のストレスがたまるだけでなく、食材のうま味を逃がし、苦みや雑味が増すという。手入れの行き届いた包丁で、料理上手を目指そう。
(松原礼奈)
[日経プラスワン2016年7月2日付]
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