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「簾戸」で涼求める 伝統のワザ生かして猛暑対策

2016/6/29付 日本経済新聞 夕刊

 猛暑をしのぐには冷房を利かせるのが手っ取り早いが、過度な使用は避けたい――。エアコンの無かった時代の日本の夏は、家を衣替えするように障子戸や襖(ふすま)を、竹ひごなどを組み風通しをよくした簾戸(すど)に置き換え涼を求めた。今夏の暑さ対策に、伝統のワザを生かしてみては。

 家の中で不快と感じる原因は部屋ごとに温度と湿度に大きな差があることだ。夏場、エアコンで涼しくし湿気を取り除いた部屋から空調の利いていない廊下や台所に出ると、とたんにむっとくる。避けるには部屋を仕切る障子戸や襖を、通気のいい状態にしておくといい。

 かつて、日本の家屋は夏になると、しつらえも変えていた。襖だったところを簾戸に入れ替えるなどがその典型だ。

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簾戸で直射日光を遮る(森村厚建築設計事務所提供)

 簾戸とは夏障子、御簾戸、葦戸(よしど)などとも呼ばれ、簾(すだれ)をはめ込んだ建具の総称である。簾には萩、葦、竹ヒゴなどを材料に使う。夏の強い日差しを遮り、自然の素材ごしに流れる風と空間を楽しむ日本の古くからの夏の知恵だ。

 最近は和室のある家も少なくなってきたので、建具を入れ替えて夏支度をする機会はそう多くないかもしれない。しかし、風を通して涼をとり簾で直射日光を遮るという機能面に加え、インテリアとして関心を持つ人が増えつつある。部屋の趣を変え、素通しの建具を楽しむという魅力がある。

 ただ、家の衣替えをしようにも、簾戸のある家は少ないだろう。建具屋に注文すれば間口など家の形状に合わせて作製してくれる。値段はデザインや木の種類、中の簾の材料で違いがあるが、建具屋に良質の桟を組んでつくってもらうと1枚あたり7万~8万円が目安になる。

 建具屋は、東京建具協同組合(http://www.tategutokyo.or.jp/)を通じて知ることができる。関東近郊の建具屋が加入している組合で、しっかりとした技能、技術を持ち備えている。組合では技術の向上、若手の育成に取り組み、勉強会なども開いている。問い合わせすれば建具屋を紹介してくれる。

 組合が薦めるのは、衣替えができる機能建具「インチェンジeco障子」。普段は障子(紙ではなく薄いアクリルシートを使用)戸として使い、夏場に障子部分を簾に入れ替えられるようにつくられている。障子戸の枠はそのままにして、簾をはめ込むだけ。枠は年中そのまま使えるので置き場所もとらない。自分で簡単に、しかもきれいに衣替えができる。

襖を桟だけの格子の建具に替えることで、部屋が明るくなる

 古民家を解体したときの材料を販売している会社もあり、簾戸の素材として使うこともできる。組子や透かし彫りの簾戸が安価で見つかる場合もある。

 本格的に簾戸を取り入れるなら、リフォームなど住宅の専門会社に頼むのも一案だ。東京都杉並区の荒井洋介さん(62)は、軽井沢の別宅のリフォーム時に、和室とリビングの間を仕切っていた襖と壁を、桟だけの格子の建具に取り換えた。部屋が明るくなり開放感が生まれた。奥の窓は、カーテンをはずし木製のブラインドを入れた。スラットと呼ばれる羽根が動くので、羽根を上げて窓をあけると風も通るし羽根の角度によって日差しの量を調節できる。和室でありながらモダンな雰囲気も醸し出され、洗練された夏の家になった。

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木製のブラインドの「ルーバー」を使い開放感を演出

 自宅に和室が無い場合でも、簾戸の技は生かせる。東京都品川区の川端幸枝さん(49)は自宅マンションを風通しがよくなるようにリフォームした。リビングの間を仕切る建具を、細長い板を平行に組み通気ができるようにした「ルーバー式」にした。ルーバーを閉じれば普通の板戸になりプライバシーも保てる。部屋の間仕切り以外に窓装飾としてカーテンやブラインドの代わりとして使われているものもたくさんある。

 和洋問わず、インテリアの要素も兼ねて建具で夏の雰囲気を出すことができる。簡単なものでは簾戸やルーバーの衝立(ついたて)や屏風もある。パーテーション代わりに置くだけでイメージが夏らしくなる。できることから試してみてはいかがだろうか。

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■快適室温は24~28度
 室内が快適と感じられるのは夏場なら温度が24~28度、湿度は50~60%程度だ。台所、浴室、洗面所など水回りは湿度も高くなりがちで、ダニやカビも発生しやすくなる。簾戸を活用し通風をよくすることで、湿気がこもることが防げる。

(リビングデザインセンター OZONE 森 希宗子)

[日本経済新聞夕刊2016年6月29日付]

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