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睡眠障害、子供も注意必要 成長・学習の遅れ招く恐れ 休日でも早起き、体内時計正常に

2016/6/24 日本経済新聞 夕刊

朝起きられない、日中眠くて仕方がない――。そんな睡眠障害を抱える子供が目立つ。悪化すれば成長や学習の遅れを招きかねない。生活習慣の乱れが主な原因で、休日でも起床時間を大きく変えないことが予防の一手だ。もうすぐ夏休み。家族は子供の生活リズムに目を配り、「おかしいな」と感じたら改善していきたい。

「どうしても朝起きられず、学校に行けない」。昨年11月、スリープクリニック銀座(東京・中央)の子供専門の睡眠外来を中学3年の男子生徒が両親と訪れた。いじめが原因で不登校に。数カ月で朝、起床できなくなった。学校側の対応でいじめの心配は小さくなり、「登校したい」と望む。だが体がついてこない。

睡眠障害の子供を延べ1万人以上診察したという同クリニックの遠藤拓郎院長は「ここ数年、小学校低学年でも症状が出るケースが増えている」と指摘する。睡眠障害の代表例、不眠症は仕事上のストレスなどから大人に多い。子供の場合はゲームやスマートフォンなどで夜更かししても眠れないことは少なく、就寝時間よりも起床時間が遅れることが問題という。

■朝に光浴び調整

原因のひとつは体内時計の乱れだ。体内時計は1日周期で、日中は自然に体や心が活動状態に、夜間は休息状態になる仕組み。朝に光を浴びるとリセットされ、次の周期に入る。

子供は成長や身体・神経の休息のため、大人より長い時間眠ることができる。学校や行事がなければ昼すぎまで寝てしまいがちだ。

夏休みや冬休み、不登校で連続して「遅起き」になると朝日で体内時計を調整できなくなり、昼夜が逆転し「睡眠リズム障害」に陥る恐れがある。遠藤院長は「普段通り起きる習慣を崩さないことが大切。特にホルモンが分泌され、成長に重要な午前0~6時は必ず睡眠を」と呼び掛ける。

治療では徐々に体内時計を元に戻していく。毎日数時間、強い光を浴びて調整するほか、専用のメガネをかけて目から光を取り入れ、リズムにメリハリをつける「高照度光治療」などが主流だ。

予防のため、家庭で注意すべき点は何だろうか。

毎日数時間、強い光を浴びて治療する(東京都中央区のスリープクリニック銀座の子供用治療室)

スリープクリニック銀座が161人の中学3年生を調査したところ、日曜日の起床時間が「午前8時以降」から「正午以降」までの生徒の半数以上が「平日も起きるのがきつい」と答えた。平日との起床時間の差が大きいほどその傾向は強く、睡眠障害の予備軍にならないためには休日の早起きが重要だ。

診療所などには乳児についての相談が寄せられることもある。寝かしつけたはずが親の就寝時間に起きていて、「眠れていないのではないか」と不安が募る。ただ乳児の睡眠は4時間周期で、実際は十分寝ている場合が多い。乳児と寝るタイミングを合わせていけば心配は減るという。

■いびきも悪影響

一方で深夜に目を覚まして1時間以上起きていたり、1日の合計睡眠時間が9時間より短かったりすると要注意だ。子どもの睡眠と発達医療センター(神戸市)によると、睡眠障害の恐れがある。ストレスから親まで睡眠障害になる例は多く、早めに医療機関に相談する必要がある。

3歳以上で多いのが、いびきや睡眠時無呼吸症候群の相談だ。幼児は気道が狭く、へんとう腺などが腫れると圧迫されやすい。いびきがひどくなると呼吸が止まってしまう。

成長するにつれ改善されるが、放置すると睡眠不足のため成長が阻害される。常に眠い状態になり、学習にも支障が出かねない。うつぶせや横向きに寝ると気道の圧迫が緩和されるため、試していびきが弱まるかどうか確認したい。

子供の睡眠外来は増えつつあり、インターネットで調べることができる。様子をよく観察し、「あれ?」と思ったらすぐ専門家を訪ねてみよう。

◇     ◇

■不登校児の80% 睡眠リズム異常

子どもの睡眠と発達医療センター(神戸市)によると、不登校の状態になった子供のうち、約80%に睡眠リズムの異常がみられる。(1)徐々に起床時間がずれて昼夜逆転した(2)どの時間に眠っているのかが特定できない――などのケースだ。

校内でトラブルがなくても「慢性的な睡眠不足で突然朝に起きられなくなり、不登校になる場合がある」(同センター)。

文部科学省の問題行動調査によると、2014年度に病気や経済的な理由以外で年間30日以上欠席した不登校の小中学生は12万2902人(前年度比2.7%増)。2年連続で増加し、調査対象の児童・生徒の1.2%に相当する。

不登校のきっかけ(複数回答)としては「不安など情緒的混乱」が29.8%で最も多く、「無気力」が25.9%で続いた。

(鈴木卓郎)

[日本経済新聞夕刊2016年6月23日付]

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