国立西洋美術館 世界遺産効果で来館急増
建築家、ル・コルビュジエ設計
東京・上野公園の国立西洋美術館が注目を浴びている。20世紀を代表する建築家、ル・コルビュジエが設計した同館の本館部分が、世界遺産に登録される見通しとなったからだ。
1959年竣工で、地上3階、地下1階の鉄筋コンクリート造り。1階正面の壁を取り払って柱のみにした「ピロティ」空間、人体に合わせた「モデュロール」という独特の寸法体系など、ル・コルビュジエの構想を典型的に示した建築と評価されている。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が5月、同館を含む7カ国17点のル・コルビュジエ建築を一括して世界遺産リストに記載すべきだと勧告した。
本館は主に常設展に使われている。美術館によると、登録勧告の翌日、5月18日の常設展入場者は2205人。一挙に普段の4倍に増えたという。たまたま「国際博物館の日」にちなんだ無料観覧という条件も重なったものの、前年の同じ「国際博物館の日」に比べても1.5倍の人出だった。
梅雨の合間の晴れた日に美術館を訪れると、本館前で立ち止まってカメラやスマートフォンを取り出し、建物を背景に記念写真を撮る人が目立った。美術館の事業担当、古沢美久氏によると、以前の人気撮影スポットは本館に向かって右側の手前にあるロダン作の彫刻「地獄の門」だったが「最近は休館日でも本館の建物を写真に撮る人が多くなった」。
内部は「19世紀ホール」という吹き抜けの空間を中心に、展示室がらせん状に配置されている。これはコレクションが増えるに従って、建物外側に展示空間を追加していくというル・コルビュジエの「無限成長美術館」構想に基づいている。現在は館内のこうした見どころも撮影可能な部分が多いが、これ以上入館者が増えれば、撮影制限も検討する必要があるという。
館内のショップでは、本館をかたどった組み立て式のペーパークラフトやクリアファイルなど「関連グッズがよく売れている」(古沢氏)。7月には世界遺産登録が正式に決まる見通し。それに合わせ、同館は同月9日から「無限成長美術館」のコンセプトをテーマにした小企画展を開く。作品や展覧会だけでなく、美術館建築への関心がこれからも続きそうだ。
(郷)
[日本経済新聞夕刊2016年6月22日付]
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