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「浅草寺は凶が多い」は本当か おみくじ配分事情

2016/6/21 日本経済新聞 朝刊

都内有数の観光名所、浅草寺(東京都台東区)には、こんな噂がある。浅草寺のおみくじには凶が多い――。凶は誰だって引きたくないもの。噂は本当だろうか、真相を探った。

浅草寺では1年間に約300万人がおみくじを引く

まず、都内の観光地情報に詳しいはとバス(東京・大田)に聞いた。担当者は「確かに噂は聞きますが」と前置きした上で、バスガイドの説明マニュアルにはないと言う。ただ浅草寺を回るツアーで「バスガイドによっては体験談として『凶を引いた方が多いようです』と乗客に紹介することはあります」と打ち明ける。

これが噂の出どころかどうかは不明だが、浅草寺に単刀直入に聞いた。「おみくじには凶が多い、とよく言われますが、古来のおみくじそのままです」と寺側は説明する。気になるおみくじの吉凶の各本数を聞くと、100本のうち「大吉17本、吉35本、半吉5本、小吉4本、末小吉3本、末吉6本、凶30本」。つまり凶の出る確率は3割、意外に高い確率だった。

では他の寺や神社のおみくじと比べると、浅草寺のおみくじは凶が多いのか。「信仰に関わることなので……」。関係者の口は一様に重い。匿名を条件に話してくれた都内のある寺は「最近は凶は減らすところが多い。入れないところもあります」と明かす。

神棚や神具を販売する、みす平総卸店(東京・台東)は小売店や飲食店などに販売するおみくじに凶を入れていないという。確かに凶を引けば「縁起が悪い」と客足は遠のきそうだ。

凶は喜ばれないため、本数を減らしているおみくじが多く、昔ながらの配分をきちんと守る浅草寺で凶が出やすいと噂が広まったようだ。

おみくじはそもそも中国由来で、日本では平安時代までさかのぼるとされる。比叡山延暦寺の元三大師が多くの人を導くために、願う事柄の吉凶を占う、おみくじを広く普及させたとの説が有力だ。

浅草寺を訪れる人は急増する外国人観光客も含めて年間約3000万人、そのなかでおみくじを引くのは約300万人に上る。浅草寺は「凶が出た人もおそれることなく、辛抱強さをもって誠実に過ごすことで、吉に転じます」と説明する。凶を引いたからといって、落ち込む必要はなさそうだ。

■おみくじメーカー、新規参入ほとんどなし

おみくじには決まりがなく、形も書式も自由という

おみくじを作る会社は、全国で数社あるといわれている。あるメーカーによると、おみくじの紙を折りたたむのは手作業で手間がかかるため、新規参入はほとんどない。

おみくじの表記は決まった形式はなく、和歌や漢詩、花言葉もある。例えば、明治神宮(東京・渋谷)は吉凶を示さず、明治天皇と昭憲皇太后の和歌を選び、解説文をつけている。最近は外国人観光客向けに英語表記のおみくじもある。

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