「ナショナル・シアター・ライヴ」
英国演劇を映画館で
話題の演劇を見たくても、遠くの劇場まで足を運ばなければならなかったり、切符が売り切れていたり。ましてや海外の公演ともなればセリフを聞き取る力も必要になり、ハードルは高い。「ナショナル・シアター・ライヴ」は、英国で上演された人気の舞台を映像に収録、日本にいながら映画館のスクリーンで鑑賞できるシリーズだ。字幕付きのため言葉の壁もない。
英国演劇界をけん引する国立劇場ロイヤル・ナショナル・シアターが2009年に始めた企画で、世界各地の映画館で上映している。日本では2年前、人気俳優ベネディクト・カンバーバッチが主演し、映画監督のダニー・ボイルが演出した「フランケンシュタイン」を皮切りに、毎年4~6本の新作を公開。好評だった作品のアンコール上映もしている。最も人気を集めた「フランケンシュタイン」はこれまで2万人を動員した。
演劇は生で見るのが一番だが、映像ならではの利点もある。カメラをレールに載せて横に移動させながら俳優の動きを追ったり、クレーンで高い位置から撮影したり。表情の変化をとらえたアップの映像など、客席では見ることができない場面も可能だ。映画館での上映に際しては、演出家や俳優らによるインタビュー映像を本編の前に映すほか、途中休憩の時間には英国の劇場での休憩時間の様子を撮影した映像を流し続け、あたかも現地にいるような気分に浸れる仕掛けも。
トム・ヒドルストン主演「コリオレイナス」、ヘレン・ミレン主演「ザ・オーディエンス」、カンバーバッチ主演「ハムレット」、キャリー・マリガン主演「スカイライト」などシェークスピア劇やスター俳優の出演作をこれまで上映してきた。「舞台を映像で見ることに半信半疑でも、1回鑑賞するとすっかりはまり、リピーターになる人も多い」と日本の配給会社カルチャヴィルの中村未知子氏。芝居や俳優のファンだけでなく、演劇人や英文学、芸術系の大学関係者の関心も高いという。
料金は一般3千円で学生2500円。「英国の劇場に行くお金もチャンスも少ない若い人たちに刺激を与えることができたらうれしい」と中村氏は語る。
(の)
[日本経済新聞夕刊2016年6月8日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。