蜃気楼の犬 呉勝浩著共通テーマ奏でる短編連作

(講談社・1400円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

雨の降りやまない朝、交差点で起こった連続射殺事件の深層には、何があったのか。

短編連作の作りだが、5編目の表題作でそれぞれの設定が別の照明を浴びてくる仕掛け。

2回り年下の妻が怖い主人公の刑事。難事件を片づける一方で、出産が近づき、精神的に不安定になる妻。その対照も鮮やかだ。

連作として読むなら、各話のベースには、「長い墜落死」を解明する第2話をはじめ、コアなミステリ読者を悦ばすトリックと「逆説」がテンコ盛り。最終話に至ると、それらを「部品」にした通奏テーマが浮かびあがる。蜃気楼(しんきろう)のような「正義」に身を賭ける犬たちの物語だ。

器の大きさを期待させる新人の第3作である。

★★★★

(評論家 野崎六助)

[日本経済新聞夕刊2016年6月2日付]

★★★★★ 傑作
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…

蜃気楼の犬

著者 : 呉 勝浩
出版 : 講談社
価格 : 1,512円 (税込み)

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