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鳥飼玖美子著「本物の英語力」

英語格差に焦る大人が飛びつく

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NIKKEI STYLE

同時通訳の第一人者で、テレビやラジオの英会話講座でも活躍する鳥飼玖美子氏の「本物の英語力」(講談社現代新書)が売れている。2月の発売から約3カ月で累計発行部数が10万部に達した。英語力が仕事の評価に直結する「英語格差」がビジネスの現場で広がっていると打ち出し、焦る30~40歳代の会社員が手に取っているようだ。

本書は鳥飼氏が2011年に刊行した「国際共通語としての英語」(同)の続編だ。前著は初版1万1000部で発売し、発行部数は現時点で6刷2万部。

本書も同程度の販売を見込んで初版1万2000部でスタートした。すると特段、宣伝広告に力を注いだわけでもないのに「全国の書店で予想以上に売れ、増刷を決めた」(講談社で販売を担当する小林直樹部次長)。5万部でヒットといわれる最近の新書の中では異例の出足だ。

英語に関する本が数ある中で本書が注目を集めたのは、英語能力試験TOEICが5月に10年ぶりに改訂されたことも影響しているようだ。社員に同試験の受験を義務付け、一定以上の点数取得を海外駐在や昇進・昇格の要件にしている会社も多い。このTOEICが「より実際的な出題形式に変更され、対応に苦慮する人たちが本書のタイトルに関心を持った」(講談社現代新書の青木肇編集長)。

そうした人たちが店頭でパラパラとめくると、いきなり「『英語格差』(English divide)という言葉があります」という書き出しに引きつけられる。パソコンやインターネットを使いこなせないと情報収集能力に差が付く「デジタルデバイド」に続く新たな格差で、多くの会社員が日々実感している現実でもあるだろう。

本書はこうした格差の存在を認めつつ、英語が苦手な人に学習意欲を取り戻してもらいたいと続ける。挙げられる学習法は「関心があることで英語を学ぶ」「英文をたくさん読む」など決して目新しくはないが、有効性を論理的に説き分かりやすい。「諦めていた英語をもう一度、学ぼうと思った」などの感想が寄せられているという。版元は「英語格差」を強調した帯に掛け替え、より幅広い読者に訴えていく考えだ。

(枝)

[日本経済新聞夕刊2016年6月1日付]

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