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憤る生活者見つめる 崩壊する家族描く新作映画

劇作家・赤堀雅秋さん

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NIKKEI STYLE

劇作家、演出家、俳優として活躍する演劇界の鬼才が、映画監督として注目を集めている。4年前の監督デビュー作「その夜の侍」は国内外の映画祭で上映されるなど話題を呼び、満を持して2作目の「葛城事件」(18日公開)を作り上げた。

「前作で映画監督をオファーされた時、かたくなに無理と抵抗していた。でもやってみると大変だったが楽しかった。根本的にゼロから何かを生み出す行為が好きなんでしょうね。今では仕事の話が来なくても自分で映画を作りたいぐらい」と笑顔をみせる。

一戸建てを新築し、理想を求めるがゆえに家族を抑圧的に支配する父(三浦友和)、流されるまま精神を病んでいく母(南果歩)。長男(新井浩文)はリストラされても家族に言い出せず、次男(若葉竜也)はままならぬ日々から「一発逆転」と称した無差別殺傷事件を起こし死刑囚に。そして彼らの前に死刑反対のために次男と獄中結婚する女(田中麗奈)が現れる。「葛城事件」は崩壊していく家族を見つめる群像劇だ。

「やるべきことはやっているのに」と思い通りにいかないことを恨み、「だから日本はダメなんだ」と酒場でくだを巻く。理想が空回りする父の姿は特別なものではなく、どこにでもありそうな光景だ。

「振り返れば自分自身もそういうものを多分に秘めている。この家族が置かれた状況は、われわれの地続きにあるという観客の想像力を喚起したい」。2年前に上演した舞台劇を、映画化に際してより身近と感じられる設定に書き直したのも「観客にとって自分とは全く関係ない話、にしたくないと強く思った」からだ。

前作「その夜の侍」は、苦痛を秘めた被害者家族と懲りない加害者の関係を濃密に描いた。見れば心がざわつくのに、スクリーンにくぎ付けになる。それは「ひょっとしたら自分も」と思わせるものが赤堀作品に存在するからだろう。

「市井の人々、生活者を描きたい」と語る。「なぜかと問われても、自分でもよく分からない。意義があるからではなく、もっと感覚的なんです」。取材時は演出助手を務める歌舞伎の稽古中。「(演目の)『四谷怪談』は当時の町人の生活が描かれた生世話もの。言葉や習慣は今と違っていても、変わらぬリアリティーを感じる。僕も現代の生世話ものをやりたい」

わかりやすさが優先される現代のエンターテインメントの風潮に異を唱える。「半分愚痴ですが、『分かる』『分からない』が『面白い』『面白くない』の線引きの基準になっていることに危機感がある。お客さんにではなく、そういう基準でものを作ろうとする作り手に憤りを感じる。理屈として『分かる』『分からない』ではなく、何をどう感じるのかが作品にとって一番大事なのではないか」

将来を尋ねると「演劇でも映画でも地道にメシが食える程度に継続していきたいですね」とほほ笑む。「自分で納得できるものを丁寧に作っていけば、ちゃんと見ていてくれる人がいると信じているんです。迎合すると一時的に評価されても後が続かない。真摯に仕事をしていきたい」

◇     ◇

無力さバネに、かじを取る

身近に特別な演劇好きがいたわけではなかった。劇団を旗揚げしたのも「『有名になりたい』『お金が欲しい』という下世話なモチベーションがあったことは確か」と振り返る。

「実は演劇を見始めたのも30歳ぐらいになってから。映画もその時々に食指の動いたものを雑多に見ている。雑食ですね。それが無自覚のうちに(自分の創作の)栄養になっているのかもしれない」

気の向くまま歩み出したこの世界だが、「やればやるほど自分は何者でもなく、何もできないということを思い知っている」という。「格好つけた言い方になってしまうけど、だからやり続けているのかな」とも語る。

映画監督の仕事は「(撮影場所を探す)ロケハンも、撮影も編集も楽しく、同じくらい苦しい。例えて言えば船長のようなもので、南に行くのか北なのか、それを決める責任と怖さがある。でもやはり魅力的。本音を言えばやり続けたい」

(文化部 関原のり子)

[日本経済新聞夕刊2016年6月1日付]

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