罪の終わり 東山彰良著
崩壊後の世界、圧倒的な迫力
久々に圧倒的な迫力のポスト・アポカリプスSFである。
小惑星大接近に伴う、その影響で食物が枯渇し、一部人類が、飢餓から逃れるために、最悪の禁忌とされる行為に走る。
本書はそのタブー破りを肯定する、飢えの時代の救世主伝説。黒騎士と呼ばれる彼は、母殺しの他、聖書を思わせるエピソードの数々に包まれているが、どこかヒーロー伝説に近いノリ。
語り手が入念なリサーチをもとに検証するという趣向で、崩壊後のアメリカの凄惨な光景を描き出し、息苦しくなるほどだ。けれども、どこか透明で理性的な目線があるのも印象的。極貧の人が子のためにパンを盗む。これを裁くのにどういう想像力が必要なのか。究極的な問いがそこに見えるからだ。
★★★★
(ファンタジー評論家 小谷真理)
[日本経済新聞夕刊2016年5月26日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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